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【倉庫】国交省と消防庁が「アスクル倉庫火災」受け、対策検討会

2017.03.21

国土交通省と消防庁は14日、第1回「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」を開催した。同検討会は三芳町で発生したアスクル(本社・東京都江東区、岩田彰一郎社長)の倉庫の火災事故を受け、大型倉庫の防火対策と消防活動について議論を行うもので、6月末までに方針をとりまとめる。

検討会は、小林恭一・東京理科大学教授(座長)、関澤愛・同大学教授、辻本誠・同大学教授、長谷見雄二・早稲田大学教授ら4名の委員と国交省と消防庁の関係者が出席するほか、オブザーバーとして物流・倉庫分野から日本物流団体連合会、日本倉庫協会、不動産協会、消防分野から東京消防庁、北九州市消防局、自治体から埼玉県都市整備部、東京都都市整備局のそれぞれ代表者が参加した。

会の冒頭、青木信之消防庁長官の挨拶に続き、国交省の由木文彦住宅局長が「国交省では建築物の安全・安心を支える取り組みを使命としている。今回の火災事故の原因を把握し、再発防止を進めるために検討会を開催する」と挨拶。初会合では、火災事故の発生から鎮火までの状況説明と出火倉庫の概要についての報告を中心に議論が行われた。

物流に関しては、日本倉庫協会の鈴木健寿調査部長が「出火した倉庫はアスクルが自社施設として利用していた自家倉庫であり、倉庫業法に基づき倉庫会社が運営する営業倉庫ではなかった」と説明するとともに、出火したアスクルの倉庫は延床面積が7万平方㍍の大型倉庫だが、近年は延床面積5万平方m超の大型物流施設の開発が増加する傾向にあることを指摘した。

●防火シャッターの一部は作動せず

議題として、消防庁より、出火した倉庫の概要、火災発生から鎮火までの火災事故の状況と消防用設備の状況が説明された。出火原因をはじめ出火状況については現在調査中であるものの、廃棄ダンボール類の置き場に使用していた「端材室」の1階部分から出火し、2階へ燃え移った可能性が高いことが指摘された。

続いて国交省より、建物の鎮火後の倉庫内状況が報告された。それによると、3階建ての倉庫内の各区画に設置された防火シャッターのうち、閉鎖状態にあったものの他、作動していなかったものや閉鎖障害により完全に遮断できていないものがあることが分かった。作動不良の原因は調査中で不明であるものの、閉鎖障害の生じたシャッターについては、コンベアあるいは床上の蔵置物が障害物となり、完全遮断を妨げていたことがわかった。

消防庁からは出火した倉庫が消防法令の消防用設備(消火器、屋内消火栓設備、屋外消火栓設備、自動火災報知設備、消防用水その他)について基準を満たしていたことと、倉庫における消防法令の防火管理について防火管理者の選任をはじめ消防計画の作成・届出や消防訓練を実施していたことが報告された。

●ラック式倉庫の問題点も指摘

また、消防庁からは、同倉庫には「ラック式倉庫」が設備されていたが、構造上、火災が発生した場合、煙突効果により燃焼速度が非常に速く、天井が高くなると屋内消火栓設備では消化できないことや空間が狭小で消防活動が困難になることが指摘された。さらに、屋内消火栓設備が送水可能な高さは概ね10㍍で、それ以上高い部分へは放水が困難であることと、1995年時の調査によると高さが10m以上の「ラック式倉庫」が98%を占めることが説明された。
次回は4月12日に開催する予定。

▼アスクルが「再発防止委員会」設置

アスクル(本社・東京都江東区、岩田彰一郎社長)は14日、社内に岩田社長が委員長を務める「再発防止委員会」を設置し、防火管理体制を強化していくことを決めた。同委員会は、同日開催された「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」において、倉庫の防火シャッターの一部が作動せず、閉鎖障害を起こしていたものがあったこと等を受けて設置した。「再発防止委員会」は外部の専門家を交えて構成。今後の消防・警察の調査結果に基づき、改善が必要な是正措置に関し、防災統括機能として防災対策を充実させるとともに社員の防災意識の向上を図っていく。

(2017年3月21日号)


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