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国交省が倉庫の「事前確認制度」導入

2018.04.12

国土交通省は倉庫登録制度を改正し、弾力的運用を開始することを決めた。新たに「事前確認制度」を導入。営業倉庫ではなかった倉庫を、営業倉庫として登録するための期間を短縮する。倉庫業者は営業拡大のスピードアップが可能になる。また、物流不動産事業者の所有する施設を倉庫会社が利用しやすくなる。国交省では制度改正により、倉庫業のビジネスチャンス拡大を支援する考え。改正した制度は7月から運用を開始する。

営業倉庫への変更をスピードアップ

倉庫会社が需要拡大や新規案件の受注に対応するため、営業倉庫ではない倉庫を営業倉庫として使用する場合、使用目的の変更など登録しなおすことが必要になる。倉庫を賃借して利用する場合や、自社が所有する非営業倉庫(自家用倉庫)を営業倉庫として活用する場合が想定される。これまで営業倉庫への「変更登録」は、申請から登録終了まで、およそ2ヵ月の期間がかかっていたため、倉庫業界からは登録期間の短縮を望む声が挙がっていた。

国交省では業界の要望を受け、制度の見直しを開始。変更登録を行う際に確認が必要な「施設設備基準」のうち、いくつかの項目に限り、事前確認を済ませておき、登録審査の期間を短縮することとした。確認項目を減らすわけではないため、営業倉庫の安全・安心を担保する制度の仕組み自体は変わらないが、大幅な期間短縮が進むことになる。新制度の運用開始前のため明確ではないものの、これまでの2ヵ月が2週間前後に短縮される可能性も想定される。

ハード面の確認項目を「事前確認」可能に

営業倉庫への変更登録について、審査の対象となる「施設設備基準」は、倉庫の種類によって項目が異なるものの、営業倉庫として安全・安心な運用を図るために必要なハード面での基準が設けられている。

たとえば1類倉庫では、建築基準法に適合していることは前提として、屋根・壁を有し、土地に定着していること、外壁・床の強度や防水・防湿・遮熱・耐火の性能をもつこと、防火区画、消火設備の確認、防犯・防鼠措置が施されていること、近接する建築物に対する災害防止措置の必要性――など、施設設備基準を満たしていることが不可欠となる。審査担当者は、多くの基準に関して、図面・書類と実際の倉庫への検査作業により審査を進めるため、これまではある程度の期間が必要だった。

今回の改正では、営業倉庫としての活用を開始する前の段階で、主にハード面の基準について確認を済ませておくことを認めることとした。実際の登録申請がなされてからは、倉庫の使用権原(土地・建物の所有権など)の確認をはじめ、寄託される物品の種類や倉庫管理主任者選任の有無など、倉庫運用のソフト面での審査が行われるが、一定の審査期間が必要となるハード面での基準が確認済みとなっているため、登録終了までの期間が大幅に短縮されることになる。

国交省の担当者は、事前確認制度の導入の目的について「需要の波動に対して借庫などにより対応する場合、これまで変更登録には一定の期間がかかっていた。登録のための期間を短縮し、倉庫会社の機動的な施設運用による積極的な営業活動を支援していく」と説明。「新制度の導入により、所有する自家倉庫の営業倉庫への転換がスピードアップできる。また、自社施設に余裕を持たない事業者も、借庫による業務開始を機動的に行えるようになる。ニーズの波動に応じた施設活用の可能性が広がる」としている。

物流不動産にもメリットが

新制度は倉庫の所有者が活用することを想定している。倉庫業者だけでなく、物流不動産事業者や荷主企業にもメリットがある。
物流不動産は、自社物件について変更登録に必要な事前確認を済ませておくことで、早期に営業倉庫としての運用が可能になることを倉庫業者に対してアピールできる。

荷主企業は、自家倉庫の空きスペースの事前確認を済ませておくことで、倉庫会社や3PL事業者との施設のシェアリングなどがしやすくなり、倉庫の効率的運用が可能になる。

なお、今回の倉庫業法施行規則の改正では、第7類物品や高圧ガスなどの取り扱いについても変更がある。これまで倉庫業法では第1類倉庫では保管・貯蔵が出来なかったリチウム電池や高圧ガスなどについて、指定数量未満の場合は、保管できるようにする。
(2018年4月12日号)


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