JR貨物/21年度事業計画、連結経常利益100億円確保へ
JR貨物(本社・東京都渋谷区、真貝康一社長)は3月31日、2021年度の事業計画を発表した。収支面では、新型コロナウイルス感染拡大による需要減があった20年度からの回復を期し、鉄道事業での大幅な増収を計画。連結ベースで売上高2013億円、経常利益100億円の達成を目指す。
21年度は5ヵ年計画「JR貨物グループ中期経営計画2023」の中間年に当たる。策定の背景として、労働力不足や自然災害の激甚化、SDGsへの対応、技術革新の進展などの外部環境の変化に加え、新型コロナによってeコマース市場が急成長するとともに、物流のデジタル化が加速。さらに、政府がカーボンニュートラルの目標を公表したことで、「環境特性、労働生産性に優れた幹線物流モードとして、貨物鉄道が果たすべき役割は増大している」と分析。その上で、ニューノーマル時代に求められる視点として、①事業の強靭化、②ESG経営、③DX・IT化を掲げた。
主力の鉄道事業では、「ニューノーマルを見据えた営業活動の推進」として、eコマースや積合せ貨物、定温輸送貨物、家庭用食料品、農産品など需要が伸長または安定している品目をターゲットにした営業を強化することで、増収につなげる。また、今年3月のダイヤ改正で積合せ貨物向けにブロックトレインを新設したのに続き、22年春のダイヤ改正に向けてもブロックトレインの増設に向けた提案を強化していく。
鉄道強靭化と長期寸断時の対応強化では、災害時のリダンダンシー確保を目的とした機関車の改造・試運転を実施する。具体的には、交直流形電気機関車EH500を改良し、日本海縦貫線でも運転できるようすることでBCP対策を強化する。
また、22年度に本格運用するトラックドライバー用アプリを全国6駅で試運用し、荷役作業の効率化など貨物駅のスマート化を進める。貨物駅の高度利用では、安治川口駅と盛岡貨物ターミナル駅の2駅を対象に、土地の有効活用に向けた検討を深度化する。「スマート貨物ターミナル」の実現に向けた新技術の活用では、駅構内におけるトラック隊列走行の実現を目指し検証試験を実施する予定。
このほか、新規事業では、「植物工場」の事業化に向けた取り組みに着手する。
単体鉄道事業も大幅増収を計画
21年度の収支想定では、連結売上高2013億円、連結経常利益100億円を計画。同社は18年度以降、相次ぐ自然災害やコロナの影響などにより収益が低迷していたが、今期は連結経常利益で100億円を超えた16年度、17年度のレベルへの回復を目指す。
この中で、単体の鉄道事業の売上高は1470億円を計画しており、20年度の見通し(今年1月の修正計画)から120億円の増収を目指す。31日に会見した犬飼新・取締役兼常務執行役員経営統括本部長は「3月のダイヤ改正で運転開始したブロックトレインや、満床稼働した東京レールゲートWESTの賃貸収入などが押し上げ要因になる」と説明。コロナ禍でも需要が好調なeコマースや積合せ貨物などを中心に輸送量の拡大を図る考えを示した。単体での経常利益は87億円を計画しており、これも16~17年度レベルへの回復を見込む。
設備投資額は総額396億円を予定。内訳は成長・戦略投資が252億円、維持・更新投資が143億円。成長・戦略投資の主な内容は、22年度に開設する東京レールゲートEASTの建設費やトラックドライバー用アプリの開発費などを盛り込んだ。犬飼氏は「今期はレールゲートの建設費などが加わるため、例年よりも成長・戦略投資の比重が高まる」と述べた。
(2021年4月6日号)