メニュー

【ズームアップ】激甚化する災害にどう備えるか=新潟輸送

2021.01.12

昨年12月16日、日本海側でにわかに降り積もった雪により、関越自動車道では延べ2000台を超えると見られる車が、3日間に渡って立ち往生した。中には路線便などのトラックも巻き込まれ、「突然の大雪で予測しきれなかった」と北陸地方の運送会社幹部などは振り返る。こうした事態に先駆け、新潟県を本拠とする米菓メーカー最大手・亀田製菓の物流子会社である新潟輸送(本社・新潟市江南区、助川勉社長)はドライバー向けの非常用防災セットを作り、長距離トラックの乗務員らに配布。「災害は激甚化しており、新潟には豪雪地帯もあることから、有事に備えた」と助川社長は話す。

ドライバー用防災セットは、亀田製菓グループで非常食や宇宙食の製造販売事業を手掛ける尾西食品と共同で開発。保存用の「非常用持ち出し袋」の中に、3食分の非常食と保存水3本、軽食2箱、携帯トイレ1回分、12時間持続の携帯用カイロ2個をセットしている。保存食には尾西食品の商品を採用。コメを急速乾燥させた「アルファ米」を使用した「携帯おにぎり」「五目ごはん」「わかめごはん」は、パッケージに水を注ぐことでふっくらとしたご飯が完成する。軽食として用意したライスクッキーは28種類のアレルギーに対応している。

新潟輸送ではこの防災セットを11月30日までに、子会社の亀田トランスポートで幹線トラックに乗務するドライバー48人へ配布。運行前点呼時に手渡しし、各車両に常備するようにした。夏季のみ、車内温度上昇による食品の変質を避けるため帰着時に事務所へ返却するが、現在、年間を通して車内に積載可能な容器を開発中にある。基本的には災害時の活用を見込むが、長時間に渡る納品待ちなどで車を出られないような状況下にも、「安心して食事を摂ってもらいたい」として自由に使用できるようにしている。

同社では、まずは長距離を走行する幹線ドライバーを対象としたが、順次、他部門への展開を予定し、地場配送や物流センターへの配布も想定。とくに、今回の豪雪を受けて社内では「地場の配送ドライバーにも携行させたほうがいいのではないかとの意見も挙がっている」という。さらに、外部企業やトラック協会などへの販売も視野に入れる。尾西食品の非常食が、立ち往生した車の救助に当たった東日本高速道路の社員や自衛隊員への配給に使用されたこともあって問い合わせが増えており、「急ピッチで対応するよう打ち合わせ中にある」と助川社長は説明する。

12月の豪雪では亀田トランスポートのトラックも数台が渋滞に巻き込まれたが、ドライバーらからは「不安の中、防災セットのライスクッキーと携帯おにぎり、五目ごはんを食べてホッとひと安心できた」などの声が寄せられている。豪雪や豪雨、台風、地震など災害が甚大化する中、止まらない物流の担い手であるドライバーを守るための様々な対応が求められているが、非常用防災セットの常備は、“従業員に寄り添う”取り組みのひとつとして注目されそうだ。
(21年1月12日号)


関連記事一覧