【話題】全国網でフェリー輸送ニーズに対応=鈴与CN
今年2月に受賞案件が発表された、「第1回海運モーダルシフト大賞」。その優良事業者賞受賞11案件のうち5案件に名を連ねるのが、鈴与グループだ。同グループでフェリー輸送サービスなどの国内運輸事業を展開する鈴与カーゴネット(本社・静岡市清水区、松山典正社長)では全国自社輸送ネットワークを強みに、今期(2021年8月期)、フェリー(RORO船)輸送取扱本数を5万5000本へ引き上げる計画にある。
前期実績は5万本、生産性向上施策も進捗
「20年8月期は新型コロナの影響を大きく受け、目標には未達ながらも5万本を達成できた」と亀井遊太取締役フェリー輸送事業本部長は話す。
コロナ禍で自動車関連輸送や業務用加工食品の取扱いが低迷したのに加え、東京オリンピック・パラリンピックの延期が重なり、飲料・ビール関係の出荷も鈍化した。しかし、巣ごもり需要で家庭用食品、日用雑貨品が伸長した上、9月以降は自動車関連を中心に回復基調に転じ、好調に推移した。
一方、オペレーション面では、「自社トラクタヘッドの配車改善や自社シャーシの稼働率向上に全社を挙げて取り組んだ」と亀井氏は説明する。
上り貨物獲得へ営業強化、自社車両の運行効率改善
新型コロナによる一時的な物量減から長距離トラック輸送の集車不足は解消しているが、コンプライアンスの強化、ドライバーの労働時間短縮、CO2排出量の削減など社会的な責任を果たすため、鈴与カーゴネットでは引き続き、フェリー利用を主体とした長距離輸送の拡大を図る。
中でも、鈴与グループが本拠地とする清水港に16年から就航した川崎近海汽船の大分航路では、静岡発着に限らず関東や中部・甲信越地域など、より広域の貨物を営業ターゲットに据えて集荷を進め、既に取扱本数は年間約9000本まで増加しているという。
反面、「課題は大分発貨物の獲得」と亀井氏。現在の物量は製造拠点・物流拠点が集積する関東を含めた清水発に比べ、大分発の本数が少なく、ややアンバランスな状況にあり、シャーシの空回送が生じている。
そこで、九州に3人の営業担当者を専任で配属し、九州支店の社員と連携しながら営業を展開する体制とした。また、主要船社が定期航路を結ぶ関東、関西、北海道の各エリアも同様に、専属営業マンと配車・CS業務を推進する支店とが一体となって提案営業を積極化させる。
営業ターゲット品目は、常温の食料品や医薬品、日用雑貨品など景気に左右されにくい「安定貨物」を中心に据える。
さらに、荷主の異業種間連携にも着目。多品種小ロット化が進む中、フェリー輸送においてもメーカー間の混載便によるメリットは大きいという。トレーラによる大量一貫輸送のイメージが強いフェリー輸送だが、こうした中・小ロット貨物のモーダルシフトニーズにも柔軟に対応することで、荷主企業の物流最適化に貢献する。
営業施策と併せて、自社車両の運行効率もより高めていく。同社では北海道から九州まで全国に自社拠点を構え、トラクタヘッド364台、シャーシ1100本を保有する。ネットワーク型の配車システムで、全国のフェリー輸送のオペレーションの管理を行い、KPI分析に基づき、PDCAを回しながら、自社車両の運行効率を高めることで、収益性の向上と長期安定的な輸送インフラの構築につなげる。
同時に、荷主企業に対して、付帯作業の明確化を含めた適正運賃への理解も求めていく。
環境、コンプライアンス、BCP背景にますます注目
「フェリー輸送への引き合いは増えている」と亀井氏は話す。環境負荷低減やホワイト物流、コンプライアンス対応、さらには18年7月の西日本豪雨災害によるJR山陽線の運休を受けた安定輸送手段としての期待感などから、海上輸送への注目はますます高まっている。荷主企業による在庫移動の物量が増えたことで、トレーラを使用した大量輸送のコストメリットも現れやすくなっている。
鈴与カーゴネットでは全国自社輸送ネットワークと集車力に加え、低床シャーシや26t・14mシャーシなど豊富な車両ラインナップを強みとして発揮しながら、引き続き、荷主企業の海上輸送ニーズに応えていく考えだ。
(2020年12月17日号)