【ズームアップ】近畿地区で冷蔵倉庫の新設が活発化
近畿地区で冷蔵倉庫を新設する動きが活発化している。近年、冷凍冷蔵貨物の保管需要が高まっている一方、庫腹はひっ迫。直近ではタイト感がやや緩和しているが、インバウンド需要の回復に向けた潜在需要も期待できる。阪神湾岸エリアのみならず、道路アクセスのよい内陸部での展開もみられる。
環境対応、災害対策が進む
日水物流(本社・東京都港区、藤本健次郎社長)は4月1日、大阪舞洲物流センター2号棟(写真)の営業を開始した。延床面積1万6338㎡、設備能力2万4887tの5階建てで、自然冷媒を使用した冷凍機「NewTon」を採用。2016年4月開業の1号棟と合わせた設備能力は同社の物流センターでは最大規模となった。なお、物流総合効率化法の特定流通業務施設の認定を取得した。
11台分のトラックバースを設け、人手不足対応として806棚の自動倉庫と4943棚の移動ラックを完備し、将来的には無人フォークリフトの導入に対応。顔認証システムにより、庫内への出入りを24時間監視するセキュリティ体制を整えた。海溝型地震による津波の浸入を防止する充分な地盤高を確保し、屋上には非常用電源を設置。バックアップのデータセンターは他地域に配置してリスクを回避する。
二葉(本社・東京都港区、鈴木英明社長)は9月1日、大阪市住之江区で収容能力2万6230tの南港冷凍物流センター2期棟を着工した。多様な顧客ニーズに対応するとともに、環境にやさしく災害に強い施設として計画し、22年2月の竣工、同3月の開業を予定する。1期、2期を合わせて収容能力は5万2018tとなり、阪神地区でのサービスを充実させる。
同社では15年3月に、阪神地区初の拠点となる南港冷凍物流センター1期棟を開設。1期棟に続き基礎免振構造RC造を採用し、F級・CF級合計28室を備え、竣工後は1期、2期合わせてF級・CF級・C級合計68室に増強される。環境に配慮し、CO2/NH3自然冷媒システムを採用する。品質管理ではトラックバース20台分すべてにエアシェルターを装備する。
上組の子会社の日本ポート産業(本社・神戸市東灘区、岡田貢社長)では、神戸住吉冷蔵倉庫(神戸市東灘区)が9月30日に竣工した。冷凍食品、乳製品、畜肉、果汁をはじめとする冷凍冷蔵貨物の保管需要に応えるため建設したもの。急速冷凍庫(マイナス40℃)690t、F級(マイナス25℃)1万5300t、C&F級(マイナス25℃~プラス5℃)5450tで構成される。
鉄筋コンクリート造4階建てで、垂直搬送機3基、荷物用エレベータ1基、解凍作業室を装備。「高効率で環境負荷の少ない施設」をコンセプトに、冷凍冷蔵設備の冷媒ガスにフロンガスを使用せず、自然冷媒ガス(アンモニア、CO2)方式を採用。屋上一面に太陽光パネル(発電量は450・18kw)を敷設し、新倉庫で使用する電力の一部を賄うこととなっている。
自動化の取り組み、内陸での新設も
森本倉庫(本社・神戸市中央区、森本真弥社長)は、21年3月末の竣工予定で「六甲アイランド冷蔵倉庫」(神戸市東灘区)の建設を進めている。解凍処理・流通加工機能を備えることで物流拠点としての付加価値を高め、施設の約3分の1のスペースを自動倉庫化し、将来的な労働力不足への対応と業務の効率化を図る。竣工後は、輸入畜肉をはじめ冷凍食品等の旺盛な保管需要に対応する。
同社の旗艦拠点である六甲アイランド営業所の敷地内に冷蔵倉庫(延床面積約1万3217㎡、鉄筋鉄骨コンクリート造・一部鉄骨造3階建て)を新設するもの。既存の六甲アイランド営業所は常温庫のほか、定温庫を備え、冷蔵倉庫完成後は同一敷地内で3温度帯貨物に対応できるようになる。冷蔵倉庫での主な取り扱い貨物としては輸入畜肉を想定している。
内陸部でも新設の動きがみられる。福岡運輸ホールディングス(本社・福岡市博多区、富永泰輔社長)は11月28日、福岡運輸の「大阪茨木物流センター(仮称)」(大阪府茨木市)の建設に向け地鎮祭を行った。延床面積1万4280㎡の鉄骨造3階建てで、マイナス25℃~プラス5℃に対応する。22年4月の完成を予定している。70億円超の投資額となる予定で、グループでは最大規模となる。
関西においては兵庫県鳴尾浜、尼崎、西宮、大阪府南港に続いて、5ヵ所目の冷凍冷蔵倉庫で大阪府内では初の自社倉庫。従来、湾岸エリアを中心に拠点整備を行ってきたが、今回、初めて内陸型の倉庫となる。なお、今年度中に130億円程度の冷凍冷蔵輸送網整備を目的とする投資を予定しており、北九州市、鹿児島志布志市に続き3ヵ所目の投資となった。
(2020年12月15日号)