共同輸送、貨客混載で物流改善を=国交省/農水省
国土交通省と農林水産省は6日、東京都内で「食品等の流通合理化に向けたセミナー」を開催した。両省は連携し、花きを含む食品流通の合理化と持続的で安定的な物流構築に取り組んでいるが、セミナーはその一環。今回は共同物流や貨客混載事業を中心に講演が行われた。
冒頭、国交省の朝日健太郎大臣政務官は、「農産物などの食品流通はトラック輸送が大半を占めているが手荷役が多いため事業者からは敬遠される」と課題を指摘し、「セミナーでの先進的な取り組みにより有益な知見を得ていただきたい」と挨拶した。加えて「現在、総合物流施策大綱の改正に向け準備を進めている。食品流通も大きなテーマで、今後も農水省と連携しながら改正を着実に進める」と表明した。
続いて農水省の池山成俊大臣官房審議官が「食品流通の合理化・効率化に向け、共同物流をはじめ、統一パレットの活用、モーダルシフトや貨客混載などトラック以外の輸送手段へのシフトが重要だ」とし、「これらの取り組みを支援しながら、来年度予算でも食品流通の持続化事業を推進する」と語った。
日雑品と花きの共同物流で大幅な効率化
セミナー(写真)ではサンスター理事の荒木協和氏と日本花き卸売市場協会会長で豊明花き社長の福永哲也氏が、異業種連携による共同物流をテーマに共同講演。両社が実施している中部地区での日雑品と花きの共同物流の概要を説明した。これまでサンスターでは倉庫(滋賀県)から卸のあらた物流センター(愛知県)への輸送で復路の空車率が高かった。また、豊明花きでは愛知豊明市場から滋賀エリアの花店への配送で帰り荷がないことが課題だった。両社は国交省主催の「ホワイト物流」セミナーを機に共同化の検討を開始し、取り組みを実現。実施前後を比較すると使用車両を2台から1台に減らすことができ、両社合わせて、実車率は56%から74%に向上。空車走行距離は170㎞から74㎞となり44%削減を実現した。
荒木氏は「運送会社任せの効率化には限界が来ている。発着荷主が連携すれば出荷量・納期などのコントロールが可能だ」とした上で、「今後は異業種の発着荷主と物流会社の交流会が必要。業界横串の平準化や空車管理や次世代のユニットロードの仕組みづくりも重要だ」と提案。福永氏も「現場の知見を活かしながら、異業種同士がマッチングを行う機会を広げていくべき」と指摘した。
高速バスのトランク利用で貨客混載
貨客混載のテーマでは、食品流通コーディネート事業のアップクオリティ社長の泉川大氏が、全国で実施する高速バスの荷室を活用した貨客混載による地域産品輸送とマーケティング事例を紹介。保冷ボックスなどを活用し、鮮度を維持した農産・水産品を輸送することで、地域の特産品の販路を拡大し、付加価値向上を実現した。そのほか、農産品生産者と小売店・レストランなど利用者を結び付ける事業を展開するエムスクエアラボ社長の加藤百合子氏が講演。配送ルートを乗り合いバスのように定期ルート化することで生産者が低料金で利用者に青果物などを配送できる仕組みや、流通改善の取り組みを通じた地域活性化について説明した。
(2020年10月13日号)