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〝不良荷主〟の「通報制度」、継続検討=国交省

2020.10.06

荷主の不適切な行為についての情報をトラック事業者から直接収集する「通報制度」について、国土交通省では改正貨物自動車運送事業法に基づく荷主への働きかけの時限措置終了後も継続運用を検討していることがわかった。荷待ち時間が長かったり、悪天候時に運行を強要する荷主を早期に把握し、改善協力要請を行えるようにする。取引上、立場の弱いトラック事業者の〝駆け込み寺〟として期待されている。

SAなどでドライバーに情報提供呼びかけ

2018年12月に成立した改正貨物自動車運送事業法では、トラック事業者だけでは働き方改革や法令遵守の実現が困難であるとして、「荷主対策の深度化」を柱のひとつに位置付けた。具体的には、トラック事業者の法令遵守に関して荷主の配慮義務を新設し、荷主勧告制度について「勧告」と「荷主名公表」の一体化を法律に明記した。さらに、23年度末までの時限措置として国交大臣による荷主への働きかけを行えるようにした。

「荷主対策の深度化」の一環として、トラック事業者の働き方改革や法令遵守を阻害する〝不良荷主〟の情報をトラック事業者から直接収集し、改善要請につなげるための「通報制度」として情報提供窓口を国交省のホームページに開設。来年度は周知を拡大し、個々のドライバーに向けてSAなどに情報提供を呼びかけるステッカーなどを掲示する。

自動車局貨物課ではこれまでに寄せられた情報の件数は公表していないが、集まった情報を精査した上で荷主に対して改善の協力要請を一定程度実施しているもようだ。関係者によると「トラック事業者とドライバー個人からの意見が大多数で、地域別では都市圏が多く、地方からは少ない傾向にある」という。

改正事業法では、24年4月から施行されるトラック運転手の罰則付きの時間外上限規制適用を見据え、国交大臣の荷主への働きかけは23年3月末までの時限措置と規定している。しかし、荷主の不適切な行為についての情報提供を呼びかける「通報制度」については、荷主対策の重要な施策として時限終了後にも継続的な運用を検討すべきとの声が高まっている。

なお、国交省はドライバーの長時間労働の要因のひとつである荷待ち時間の実態を把握するため、17年7月から荷主都合の30分以上の荷待ちについて「乗務記録」の記載を義務化。今年2月には、悪天候時のトラックの運行休止に関する判断基準を公表するなど、トラック事業者の違反原因をつくる荷主に対する抑止効果となる施策を進めている。
(2020年10月6日号)


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