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働きやすい職場認証、人材確保の効果は…

2020.09.24

トラック運送事業者の職場環境改善の取り組みを“見える化”し、人材確保に役立てる「働きやすい職場認証制度」の申請受付が16日、始まった。Webを通じての申請は初日時点で38社。今年度は最も基本的な「一つ星」に限定して試行することとし、認証実施団体の日本海事協会によると「少なくとも1000社以上の認証を目標」とする。ただ、求職者が職場環境をリサーチする際、企業から発信される公式情報以上に「口コミ」や「インターネット情報」を頼りにしているところもあり、認証が人材確保に直接結び付くかどうかはまだ不透明だ。

行政処分実績、対象期間は「過去1年」

「働きやすい職場認証制度」(正式名称は「運転手職場環境良好度認証制度」)は、長時間労働の是正など運転手の労働環境や労働条件改善に取り組む事業者を評価・認証し、主に求職者に対して情報提供を行うことを目的としている。16日から12月15日まで申請を受け付け、来年5月をメドに認証事業者をホームページ上で公表する。

認証項目の達成状況に応じて「一つ星」「二つ星」「三つ星」と3つの認証段階を設け、初年度は基本的な取り組みを定着させるために、中小事業者にも挑戦しやすい「一つ星」に限定。「二つ星」「三つ星」の開始にあたっては、先進的な取り組みなども踏まえ、認証項目の追加など制度の見直しも検討する。

合否の判断基準としてすべてを満たす必要のある「認証項目」(27項目)と、合否に関係しない「参考項目」(21項目)に分類。項目の分野は「法令遵守等」「労働時間」「心身の健康」「安心・安定」「多様な人材の確保・育成」「自主性・先進性」で、認証項目の一部は大くくり化され、その中で項目の合計点が基準点を満たせば合格とする。

申請要件には、労働基準関係法令違反の公表事案になったり送検されていないこと(不起訴処分や無罪であれば可)、不当労働行為に関する救済命令等を受けていないこと(取り消し確定は可)などがあり、行政処分による違反点数の対象期間は当初の「過去3年」を「過去1年」に緩和。提出書類も重要な基本書類のみとするなど簡素化した。

さらなるインセンティブ検討に期待

同制度について8、10、14日の計3回、Webによる説明会を実施し、計1000人を超える参加者があり、初日の16日時点で38社からの申請を受け付けた。「全国から申請があり、大手よりも中小が比較的多い。大手は営業所の数が多く、その分、申請書類の用意に時間がかかっているのでは」(日本海事協会)としている。

同協会では初年度の「一つ星」について少なくとも1000社、できれば2000~3000社の認証を目指す。「コロナ対応が優先で、申請まで手が回らない」という事業者もあるが、「感染症など新たな課題に対応すべき時期だからこそ、職場環境を改善し、認証を申請したい」との声も寄せられているという。

審査料は5万円(電子申請は3万円)で登録料は6万円。営業所1ヵ所につき審査料は3000円、登録料は5000円が加算される。認証にかかる費用は決して安くない。運転手の求職は口コミの要素も大きく、ネット上で「働きにくさ」が暴露されるケースも多い。「登録しても『2ちゃんねる』に書かれたら意味がない」と認証に後ろ向きの姿勢もみられる。

登録した事業者は認証マークを使って車両等でPRすることができ、今後はハローワークにおける求人票への記載や認証事業者と求職者のマッチング支援なども検討されているが、「認証のインセンティブが弱い」との意見も根強い。費用対効果に配慮し、「二つ星」「三つ星」を対象としたさらなるインセンティブも引き続き検討が望まれている。
(2020年9月24日号)


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