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コロナ禍の小規模事業者の経営対策検討=全ト協

2020.09.10

全日本トラック協会(坂本克己会長)は、新型コロナウイルス感染症の影響で厳しい環境にある小規模事業者の経営対策の検討に着手した。車両数20台以下の小規模事業者は業界全体の76%を占め、感染症や災害が起きた際に受けるダメージが大きい。坂本会長直轄の諮問委員会をこのほど発足し、コロナの影響や経営の見通しを把握したうえで、来年3月をメドに有効な経営対策をまとめる。

小規模ほど景況感の悪化幅大きく

コロナの感染拡大は経済・消費活動の停滞を招き、国内の輸送需要は減少。全ト協が発表した4~6月期の景況感調査によると、一般貨物では輸送数量、売上高、営業利益が「減少」している割合は約8割にのぼった。車両規模別にみると、20台以下の小規模事業者の景況感は▲117・2と前期(1~3月期)より41・3pt悪化し、大規模、中規模事業者と比べ悪化幅が大きい。

小規模事業者の多くはいわゆる「下請け」であることが多く、輸送量全体が減っている中で下請けまで荷物が行き渡らなくなっているケースが考えられる。景況感調査では貨物の再委託について約5割が「減少」と回答した。需給の緩みで元請けの自車の稼働率が向上している一方で、下請け(傭車)の稼働率は著しく下がっているとの報告もある。

アンケートで影響や課題を把握

全ト協では、コロナ禍における小規模事業者の経営安定化対策、今後も起こりうる特殊災害に対する小規模事業者の有効な対策について検討するため、坂本会長の発案により「小規模事業者コロナ時・災害時特別対策委員会」を発足。委員長には全ト協理事で日本貨物運送協同組合連合会会長の吉野雅山氏が就任し、1日に第1回会合を開催した。

委員会では、小規模事業者におけるコロナの影響や課題、問題意識を確認・整理するため、9月下旬から10月下旬にかけて1100者を対象にアンケートを実施。貨物量・売上・利益、経営資源の影響と見通し、下請け専業からの脱却等経営に関する考え方、現在および今後の経営課題を聞く。

経営戦略策定、経営基盤強化を支援

アンケートにより現状を把握したうえで、小規模事業者特有の課題を整理。経営対策のとりまとめの方向性としては、経営戦略の策定に関する全ト協からの支援のほか、経営基盤の強化に向けた「コスト削減策」「IT化の推進」「リスクマネジメント」「荷主交渉力の強化」等が柱となる見通しだ。

コスト削減に資する企業の協同化に関しては、協同組合の活用や非常時における互助的な貨物融通、業務や地域ごとの連携などを想定し可能性を検討。IT化やリスクマネジメントについてモデルケースや好事例を提示する。また、「原価計算セミナー」等を通じ、「標準的な運賃」を活用した価格交渉力の強化を支援する。

10台以下の事業者の5割が営業赤字

トラック運送事業者を規模別みると、18年3月末現在、「10台以下」が55・2%、「11~20台」が21・0%と20台以下が約76%。全ト協の経営分析(18年度決算版)によると貨物運送事業の営業利益率(1者平均)は「10台以下」がマイナス1・2%、「11~20台」がマイナス0・1%で、「10台以下」については5割が営業赤字となっている。

近年、慢性的なドライバー不足に加え、労務管理の厳格化などを背景にトラック運送事業者のコストが上昇。需給が引き締まる中で、運賃の値上げなどで資金繰りをつけていた中小事業者の疲弊感が出始めていたところにコロナ禍が直撃した。景気回復の遅れが長引くと小規模事業者の経営環境はますます厳しくなると予想される。
(2020年9月10日号)


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