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【ズームアップ】物流不動産が熱中症対策を強化

2020.08.27

8月の梅雨明けから、西日本や東日本の内陸では体温を超えるような猛烈な暑さとなり、9月にかけても熱中症に警戒が必要だ。倉庫内の温度上昇だけでなく、今年は新型コロナウイルスの感染対策としてのマスクの着用も熱中症のリスクを高める。物流不動産デベロッパーでは熱中症対策にかかわる各種ソリューションを施設に投入し、テナント企業の従業員の就労環境改善、健康管理の支援に乗り出している。

リスクを可視化しアラート機能も装備

ESRは7月から、同社が開発した物流施設内で、温度・湿度をセンシングすることで熱中症リスクを可視化し、アラート機能も備えた環境モニタリングシステムのサービス提供を開始した。施設内の各フロアの一定区画ごとに屋外にセンシングデバイスを設置、温度・湿度を15分おきに計測し、熱中症リスクを可視化する。暑さ指数(WBGT)が一定基準を超えるとアラートする機能も備える。

全施設をESRが一元管理するとともに、各施設の建物管理者は建物全体、テナント企業はその占有区画というように各権限の環境状況をモニタリング。PC端末に加え、スマートフォン端末からも確認できるため、遠隔からもサポート。野田(千葉)、守谷(茨城)、名古屋の物流施設で実装し、順次サービスの提供を開始、水平展開していく方針だ。

シーリングファン導入、体感温度を低下

日本GLPでは物流施設への米国製超大型大風量シーリングファン 「Big Ass Fans (ビッグアスファン)」(日本総輸入代理店は豊田通商)の導入を積極的に進めている。暑さで放出される汗をビッグアスファンにより気化を促進。気化熱により体感温度を低下させ、大規模空間における熱中症リスクを低減させる。パワフルな空気の対流機能により、短時間で空間全体の温度および湿度を均質化することができる。

日本GLPが開発したマルチテナント型物流施設の大部分(約70%)で設置しており、今後もマルチ型の開発物件では、1区画に1機を設置していく。なお、神奈川県相模原市で開発中の「GLP ALFALINK 相模原Ⅳ」では、全館に空調設備と大型シーリングファンを併用し、より快適な就労環境を提供する。

「着るクーラー」で体表面の接触部分を冷やす

大和ハウス工業では、開発した物流施設および今後開発する物流施設のテナント企業向けに、ソニーが開発した、接触部分の体表面を「冷やす」または「温める」ことができる、着るクーラー「REON POCKET(レオンポケット)」(写真)の提案を7月から開始した。まずはグループのアッカ・インターナショナルが採用し、同社がオペレーションを行っている「DPL川崎夜光」に60台を導入する。

物流施設の多くは空調設備を導入しておらず、庫内作業員にとっては過酷な就労環境であることが課題となっている。大和ハウスグループは今後も、サプライチェーンを支える物流施設をハードとソフトの両面から、施設で働く従業員の作業環境改善に対して新たなソリューションを提供していく方針。

厚生労働省によると、2019年の職場における熱中症による死者および休業4日以上の業務上疾病者は829人だった。うち死亡者は25人で、記録的な猛暑となった18年と比べ死傷者、死亡者とも減少しているが、死傷者に占める死亡者の割合が高まっている。過去5年(15~19年)をみると、業種別で「運送業」の死傷者492件は「建設業」の759件、「製造業」の701件に次いで発生件数が多く、厚労省では「熱中症は必ずしも屋外での作業でのみ発症しやすいわけではないことに留意が必要」としている。
(2020年8月27日号)


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