通関業者の3割が在宅勤務を申請
財務省関税局によると、通関業務の在宅勤務の申請数(サテライトオフィス含む)は5日現在、約4000人となった。新型コロナウイルスの感染対策の観点から、申請要件を一部緩和していることもあり、3月以降、申請が急増。申請数は法人ベースで約290社と全国の通関業者の約3割に相当する。業界団体である日本通関業連合会(岡藤正策会長)では今年度から、在宅勤務のガイドライン策定に着手する方針で、“Withコロナ”時代の通関士の働き方として定着していく可能性がある。
「導入検討なし」7割がコロナで転換か
2017年10月に通関業法の基本通達が改正され、通関業務の在宅勤務に関する規定が盛り込まれた。在宅勤務は「情報通信機器を活用して労働時間の全部または一部において自宅で業務に従事する勤務形態」とされ、自宅を通関営業所の一部と見なす。在宅勤務の対象となる通関業務には申告も含まれる。
ただ、通達改正後、在宅勤務の制度の活用は伸び悩んでいた。大阪通関業会が昨年会員に行ったアンケートでは、在宅勤務を「導入している」はわずか2%で、「現在、導入は考えていない」は67%と7割弱。セキュリティ水準や在宅勤務者の業務管理、在宅勤務に対応する社内管理規則の作成などが課題として挙がっていた。
関税局では新型コロナウイルス感染拡大を受け、テレワークの広がりを想定。3月4日以降、税関への申請を要する通関業務の在宅勤務等の開始について、申請に必要な就業規則、社内管理規定を急に準備するのが難しいことから、これらの要件を緩和。また、従来からの在宅に加え、サテライトオフィスでの申請も認めることとした。
以降、4月には政府の緊急事態宣言が出されたこともあり、在宅勤務の申請者は急増。6月5日時点で全国の申請者は約4000人にのぼっている。その内訳は、在宅が約2940人、サテライトが約480人、在宅・サテライトが約580人。法人ベースでは全通関業者の3割に相当する約290社、営業所ベースでは580営業所が申請している。
現在、全ての都道府県について緊急事態措置の対象から解除されたものの、当面の間、再流行のリスクが存在し、引き続き、可能な限り人との接触を避ける在宅勤務が推奨されていることから、関税局では「通関業務の在宅勤務等にかかる柔軟な対応については、引き続き、当分の間、継続する」としている。
件数で成果を評価、ジョブ型雇用の可能性は?
東京商工会議所の調査では、「交通運輸/物流/倉庫業」のテレワーク実施企業は16・4%で全業種中最低だった。トラックドライバーや倉庫作業員などテレワークができない職種が多い中、通関士は在宅勤務を実施可能な環境にある。ただ、現在、申請者数は伸びているものの、申請のみでまだ実施に至っていないケースもみられるという。
通関業務は在宅勤務においても、一概には言えないが「件数」でその成果を評価でき、労働時間でなく、成果で評価するいわゆる「ジョブ型」雇用ともマッチしやすい側面もある。昨年度活動を終了した女性通関士支援ワーキンググループの報告書では、在宅勤務の勤怠管理に関しては「業務の対価は時間換算ではなく成果主義を理想とし、評価や査定方法を見直すべき」との意見も出された。
コロナを機に、通関士・通関業務従業者の働き方・働く場所が変わっていく可能性もある。AEO通関業者(認定通関業者)による通関営業所の集約も、「通関士の教育を集中して実施できるようになった」等のメリットが報告されていたが、在宅勤務の拡大やオフィスの“3密”防止の観点から、集約のメリットが薄れることも考えられる。
(2020年6月16日号)