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リードタイム延長、着荷主との調整難航

2020.02.06

トラックドライバー不足への対応として、飲料・食品メーカーで受注日「翌日納品」を「翌々日納品」とするリードタイム延長の動きが高まっているが、着荷主である大手卸との調整に難航しているケースが出てきている。「ホワイト物流」推進運動の自主行動宣言で食品メーカーの多くが取り組み項目として「リードタイム延長」を挙げているのに対し、大手卸は他の項目を選択しており、微妙な“温度差”も感じられる。

「翌々日納品」の機運が高まっているが…

飲料や食品業界などでは受注日から「翌日納品」が主流で、物流事業者が午後に出荷指図を受けて、翌日午前中に納品する運用となっている。受注日の翌日納品を前提としたリードタイムが要因のひとつとなって、長時間労働や夜間作業を前提にしてきた物流事業者の労働環境改善が進まないという指摘がある。

2018年以降、大手加工食品メーカーを中心に「翌日納品」を「翌々日納品」に切り替える動きが加速し、飲料メーカーもこれに追随。23年度末までにドライバーの待遇や労働条件・環境改善を図る国民運動である「ホワイト物流」推進運動の推奨項目に「リードタイムの延長」が盛り込まれたことを受け、さらに機運が高まった。

飲料・食品等の製造業大手(アサヒグループ、味の素、キユーピー、サントリーホールディングス、ハウス食品、明治等)が「リードタイム延長」を「ホワイト物流」推進運動の自主行動宣言で取り組み項目のひとつに挙げているのに対し、食品卸は公表ベースではゼロ。慎重な姿勢の表れとも読み取れる。
実際に、卸への「翌々日納品」が始まっている例もあるが、「調整中だが厳しい状況にある」(食品大手メーカー)との指摘も。とくに難航しているのは大手卸との調整。「地方の中小卸は『こういうご時世ですからね』とリードタイム延長についてはすぐに了解してもらえた。しかし大手卸のシェアが高いので全体として効果が出ない」(同)という。

サプライチェーン全体で課題解決が必要

「翌々日納品」ではリードタイムに1日余裕ができるため、メーカーはトラックを確保しやすくなる。また、トラック運送業者は効率的な配車や運行計画を立てることができ、倉庫業者も夕方以降の出荷作業の集中が緩和され、残業の削減にもつながるなど、製・配の双方にとってメリットが期待される。

食品メーカーの担当者によると、「リードタイム延長の動きは確実に広がってくる。業界全体でリードタイム延長が実現されれば、ドライバー不足、物流従事者の労働環境改善に大きく寄与できる」。全日本トラック協会の食料品部会も「加工食品物流におけるリードタイム延長に関する意見書」を昨年提出し、取り組み拡大を要望している。

しかし、卸は「翌々日納品」になることによって、在庫の積み増しやそれに伴う増床等の対策が必要。卸と小売の間では多品種小ロット納品が主流で、受注日「翌日納品」「毎日納品」が基本のタイトなリードタイムとなっており、受発注システムを改変する必要もあり、「翌々日納品」への移行に伴う各種しわ寄せを受ける。

メーカー側は、「翌々日納品は隔日配送ということではなく、毎日配送を維持すれば、理論上、1日分の在庫増とは結び付かない」とのスタンスだが、卸側からは「前日の発注と前々日の発注では在庫の精度が変わってくる。とくに天候に左右されるものについてはその傾向が強い」との意見が見られる。
日本加工食品卸協会では昨年、リードタイム延長に関してメーカーや小売団体に対する要望書を提出。検品レスに向けたメーカーのASN(事前出荷明細)活用や、卸と小売の間のリードタイム、配送頻度の見直しなどを求めるとともに、サプライチェーン全体での課題解決の必要性を訴えている。
(2020年2月6日号)


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