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【ズームアップ】物流女子会で荷主企業と意見交換=鈴与カーゴネット

2020.01.14

鈴与カーゴネット(本社・静岡市清水区、松山典正社長)は、同社と荷主物流部門の女性社員が交流し、連携を強めることで物流改善につなげる「物流女子会」を立ち上げ、活動を活発化させている。まずは主要荷主の1社であるサンスターの女性社員らと会合をスタートし、その後も加工食品メーカーや日用雑貨メーカーなどが加わるなど、“物流女子の輪”は広がりを見せている。

物流女子会は、昨年4月に発足。鈴与カーゴネットから4人、サンスターから3人の女性社員が集い、第1回目の会合では顔合わせを兼ねて、鈴与グループが本拠地とする清水港の見学会を行った。続く第2回目には、サンスターの工場見学を実施。双方の業務内容への理解を深めた上で、両社が抱える物流課題について意見を交換した。サンスターとの物流女子会は、その後も2~3ヵ月に1回の頻度で継続しており、飲料メーカーや日雑品メーカーなどの“ゲスト”が参加することもあるという。

この取り組みに並行し、「女性目線で見た物流の実態を荷主企業の経営陣にも訴えたい」として、鈴与カーゴネットの物流女子会メンバーが荷主企業の物流担当役員へ物流改善を提案する活動なども行っている。物流女子会を発案した、鈴与カーゴネットの川口博会長は「通常業務で荷主企業への営業を担当する男性社員では、物流の課題を『仕方ないこと』として受け流してしまいがちだが、実務に関わる女性社員は気付きも多く、そうした社員の意見は説得力も強い」と意義を強調する。

荷主企業への提案内容は「受注調整による積載率の向上」や「積卸現場における待機時間の短縮」、「荷姿や積載方法の見直しによる配車効率の改善」、「異業種の組み合わせ運行による実車率の向上」など多岐に渡るが、まずは運送業界を取り巻く環境を丁寧に説明し、鈴与カーゴネットとしての取り組みを紹介した上で、「自社だけでできることには限界がある」として協力を呼びかける。発表には実際の数値を用いたシミュレーションも盛り込み、荷主企業の物流担当者が社内で提案できるような情報の提供を心掛けているという。

また、発表後の参加会社によるフリーディスカッションは、荷主企業から“生の声”を得られる貴重な機会でもある。たとえば、カートンの汚破損による持ち戻りについて、物流会社としては判断基準の設定や緩和を求めたいところだが、荷主企業側にも「外装が汚れるとバーコードが読み取れない」といった事情がある。こうした各社が抱える課題の実情を双方で理解し合える点も、物流女子会の成果のひとつだ。

第1回から物流女子会に参加してきた鈴与運輸事業部営業課の石垣佳峰さんは「荷主企業様への一方的な要望を申し入れるのではなく、当社の状況を理解してもらい、歩み寄っていただけるように資料なども工夫している」と話す。その上で、「先方から『業務の実態を理解できた』とのリアクションもいただき、通常の営業とは別に、課題をフォーカスして伝えられる場があることに大きな意味を感じている」と振り返る。

同じく第1回からのメンバーである同課の森琴音さんも「物流会社の中だけにいると自分たちの目線に偏りがち。荷主企業と取り組みの歩幅を合わせ、対等な関係を築くことも物流女子会の目的のひとつ」と指摘。「提案への意見をすぐにもらえることで自分自身の視野が広がり、他のメーカーに対しても荷主側の視点を持った提案ができるようになるなど、営業にも活きている」と手応えを感じている。

業界の垣根を越えて、物流女子会の参加募る

川口会長は物流女子会の立上げ経緯について、「物流業界が抱える課題に対し、荷主企業と物流会社が協力した改善が必要となる中、現状を把握している女性同士の連携を深めることが安定したサービスの提供につながるとともに、女性社員が情報を入手する機会にもなると考えた」と説明する。加えて、「今まで女性の職場は事務所内の物流手配など限られた範囲に留まり、日々の業務にも追われ、事業全体に接する機会も少なく、貴重な人材を放置していたともいえる」と訴える。

同社では、より積極的に業界の垣根を越えた物流女子会を展開したい考えにあり、今後もメンバー会社を募集していく。さらに、2024年4月からトラックドライバーにも働き方改革関連法が適用されることを前に、とくに人手不足が懸念される長距離運行の維持に向けた意見交換なども物流女子会で行いたいとしている。
(2020年1月14日号)


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