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「置き配」は再配達削減の切り札になれるのか?

2020.01.07

ドライバー不足に苦しむ物流業界。宅配などラストワンマイル領域において、配達員をもっとも悩ませているのが再配達の多さだ。
国土交通省では宅配便の再配達削減に向けて年2回サンプル調査を行っているが、昨年10月に調査した最新の再配達率は15・0%。前年同時期から0・2pt低下したものの、大幅な削減にはなっておらず、改めて再配達問題を解決する難しさが浮き彫りになっている。

そうした中、再配達削減の切り札として注目が集まっているのが「置き配」。置き配の定義は通販事業者や宅配会社によって若干違うものの、荷物の受取人の了解を得た上で自宅玄関前やメーターボックス内、車庫や自転車かごなどに荷物を置くことで配達を完了させることを指す。国交省でも佐川急便や日本郵便といった宅配会社、Amazonジャパン、アスクルなどの通販事業者をメンバーにした「置き配検討会」を設置して、普及に向けた課題の整理などを進めている。

置き配のスタンダード化を目指すAmazon

現在、置き配の普及にもっとも熱心な通販事業者がAmazonジャパン。すでに一部地域で希望者に置き配サービスを提供しているが、昨年10月に岐阜県多治見市で行った実験では、受取人の在/不在にかかわらず置き配自体を基本サービスとした試みを実施した。この取り組みから、Amazonが置き配をスタンダートなサービスに位置付けたいという思惑が見えてくる。

また、宅配事業者の中で置き配に前向きなのが日本郵便。置き配バッグ「OKIPPA」(写真)を販売するベンチャー企業Yperとタイアップして実証実験やモニターキャンペーンなどを幅広く展開している。Amazonと日本郵便は今年から置き配を全国展開する方針との観測も広がっている。

置き配から〝手段〟と〝商品〟の違いが見えてくる

その一方で、置き配に慎重なスタンスを崩していないのがヤマト運輸。同社は国交省の検討会にも参加しておらず、実証実験なども行っていない。再配達の削減に向けては、宅配ロッカーの普及や「クロネコメンバーズ」による受取人との緊密なコミュニケーションを軸にしている。また、佐川急便も置き配を正式なサービスメニューにしていく考えはないようだ。置き配をスタンダード化したいAmazonと、そうではないヤマトや佐川。その違いはどこから生まれるのか――。
ある識者は「Amazonにとって配達は〝手段〟だが、宅配事業者にとっては〝商品〟。この意識の違いは大きい」と指摘する。米国や中国のように置き配をスタンダード化すれば再配達率の改善には大きな効果を発揮する。だが、宅配便サービスを商品として見れば、置き配はある種のサービス放棄とも見られかねない。そこに与すれば、長い目で見た場合、サービスや運賃の低下すら招きかねない。

ヤマトホールディングスの長尾裕社長は昨年「宅急便というサービスにeコマースの荷物を流し込むのではなく、まったく別のアプローチでeコマースに対する〝解〟がつくれるのではないか」と発言している。言い換えれば、宅配便と通販向け宅配サービスは〝似て非なるもの〟だということだ。今年は「置き配」に対する是否を軸に、ラストワンマイル領域での新たな展開が生まれそうだ。
(2020年1月7日号)


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