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「賃金維持の上で労働時間短縮を」=ヤマト労組/中央大会

2019.09.19

ヤマト運輸労働組合(森下明利委員長)は12、13日の両日に新潟県湯沢町で「第74回定期中央大会」を開催し、全国の支部から約830人の組合員が集まった。大会の冒頭、挨拶に立った森下委員長は、働き方改革の進捗について「労働時間は改革前より大幅に短縮しているが、時間外労働の減少で手当も減っている。(秋闘は)この目減り分をどう補填してくかを取り付ける交渉になる」との方針を示した。

森下委員長は挨拶の中で、「体制が整えば、お客様を増やすことで評価やインセンティブを上げるような積極的な働きも重要となるが、急増したEC荷物の配達に追われて、渉外力は弱まっている。体制を考える時には『なんとかこなせる人数』ではなく、『良いサービスができ、営業ができる環境』を考えるべき」と強調した。続けて、「最近(運賃を)値上げをしたばかりで再度営業に行くのはしんどいと思うが、今は良い仕事を続け、それをやりがいにできる環境をつくり、チャンスを待つことが大切」とエールを送った。

一方で、会社に対しては「荷物を増やすためにキャンペーンやランキングなどを実施しがちだが、現場の状況を把握せずに『地域荷主獲得キャンペーン』など始めても、その場のみの発送顧客が増えるだけで、白けた結果になりやすい。できるところは毎日の業務でしっかりやっている。そうした店をつくることを、経営戦略として優先して取り組むべき」と訴えた。

賃金については「交渉の結果、10月の賃金から、春闘で勝ち取ったベア4500円が上乗せとなり、賃金表の書き換えは21年ぶり」と評価し、今後は「EC荷物の急増で地域差が生じ、不公平感が強まっているインセンティブ制度を改定する必要がある。小委員会で協議を重ねており、現場からの意見もぜひ届けて欲しい」と集まった組合員らに協力を求めた。

労働時間で賃金の増減激しく「社員の負担に」

2019年秋季生活改善交渉(秋闘)では、マネージ組合員の年末一時金1人平均80万円と、キャリア・パート組合員の年末一時金引上げを要求する。

付帯要求としては、賃金水準を維持した上で、今期の年間総労働時間2320時間の遵守と、来期の計画労働時間2296時間を求める。来期は東京オリンピック・パラリンピックも開催されるが、同期間の対応を含めた計画労働時間は別途会社と協議していく。

所定労働時間については今期から8時間短縮の1976時間を要求する。なお、会社側の中期経営計画では来期、2138時間への短縮が掲げられているとした。公休日数は1日増の111日を要求。年休は取得率90%以上を目指すとともに、入社歴6年以内の付与日数の増加を提案する。

この中で、8月までの賃金水準の状況も報告され、全体平均でインセンティブが月間1600円ほど減少していることから、制度改正の必要性が示された。全体での賃金水準は概ね維持されたものの、個別では労働時間の短縮幅に応じて賃金が大きく増減しており、社員への負担が増している実態も見えた。

安全対策では、運行管理者による点呼の100%実施を求めるほか、安全指導長の処遇改善も要求。ヤマト運輸では今秋から営業担当などで専門職制度を開始する方針にあり、既に430人が研修を受けるが、「安全指導長こそ安全の専門家」(片山康夫書記長)として手当の充実を求める。

主管支店増設に伴い支部体制を再編

組織体制は、昨年10月の九州ヤマト運輸労働組合に続き、今年6月に四国ヤマト運輸労働組合もヤマト労組へ統合された。その上で、昨年、ヤマト運輸の主管支店が71支店から88支店へ増えたことに伴い、支部構成を再編し、10月の各支部定期大会での承認を得て、69支部から82支部体制へと移行する。

また、ヤマト運輸の今期人員体制は、8月までにフルタイム社員が4205人、パートタイム社員7328人の計1万1533人を増員したが「地域によって格差が生じている」(同)。アンカーキャスト(AC)は同時点で6579人で、物量が計画を下回っていることから採用計画も下方修正しているとした。

質疑応答では、「正月繁忙期における一斉休業」の提案があり、執行部からは「12月31日に300万個、1月1、2日にも100万個の荷物があり、過去に労働組合から正月営業を要望した経緯もある。ただ、業界にはユニバーサルサービスといいながら土日休業をする動きもあり、労使ともにパブリックコメントを提出している状況」との説明があった。

一部の支部からは「ACを採用してSDは1便に重点を置き、午後から営業に集中するとの話だったが、実際にはACの生産性が求められ、1便到着の荷物をACに残したり、荷物がデリバリープロバイダーに流れた地域では収支を優先して稼働を削ったり、人を異動させる話が出るなど会社の話が二転三転し、現場では会社への不信感も沸いている」と厳しい意見もあった。
(2019年9月19日号)


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