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【レポート】 安定供給へ、「輸送協力会」の取り組み強化

2019.09.17

ドライバー不足の中、全国各地に商品を届けるため、荷主企業と実運送を担う運送事業者との連携強化がますます重要になってきた。サプライチェーンの維持に向け、数多くの実運送事業者を束ねる〝輸送協力会”の運営に積極的に取り組んでいる荷主・物流子会社各社の事例を紹介する。(掲載は社名50音順)

アイカ工業(本社・名古屋市中村区、小野勇治社長)は毎年、同社の名古屋工場で協力会社を集めた「経営方針発表会」(写真)を開催している。アイカ工業の経営状況や事業戦略を解説した上で、同社の物流改革についてデータを用いながら詳しく説明する。その上で、今期の取り組みや今後の計画をプレゼンし、協力輸送会社に対する入札提案なども行う。

特長のひとつが、会の冒頭に同社物流部門のスタッフが勢ぞろいし、自己紹介をすること。協力会社が普段、電話やメールなどでやり取りするアイカ工業側のスタッフと顔を合せることで、コミュニケーションをより円滑にすることが狙い。また、物流改革をアイカ工業の物流部自身が主体的に進めていることもあって、協力会社への明確な提案があることも珍しい。
さらに、会では毎年、協力会社による発表の時間も設ける。各社は自社の会社概要や主力サービス、注力事業などを紹介して、協力会社同士の相互理解を深められる機会となっている。実際、協力会社間では輸送の中継をはじめ、業務面で連携が必要となる場面も多く、経営方針発表会に参加する企業からは「相手の協力会社の経営陣を知っていることで、何かトラブルが起きた時にもすぐに話がしやすく大変助かっている」との声も寄せられている。

アサヒロジ(本社・東京都港区、柴田和憲社長)は実輸送の約9割を担当する協力輸送会社との強固なパートナーシップ構築を図るため、「協力会社経営者様懇談会」を毎年開催している。同懇談会は安全・高品質で効率性の高い輸送の実現を協力会社と一致協力して目指すとともに、協力会社への感謝の意を表するために行われ、2009年の第1回は東京・大阪合わせて239社が参加。今年2月には規模を拡大し全国5都市(東京、名古屋、大阪、郡山、福岡)で開催。昨年より60社多い318社が参加した。懇談会の場では経営方針や当年度の主な取り組みを説明。また、同社が注力する安全をはじめ、品質や輸送効率の向上に向けた取り組み内容を発表し、知見やノウハウを協力会社と共有する。

柴田社長は「慢性的なドライバー不足を背景に、現在は荷主が選ばれる時代になったといえる」と指摘し、「『アサヒグループの仕事をしてよかった』と輸送パートナー会社の方々に言っていただけるよう全力で取り組んでいく」と強調する。
同社は例年の同懇談会の開催に加え、各支社レベルで協力輸送会社と連携し、共同での安全研修や、協力会社のGマーク取得の推進を行う。また、自社専用給油設備を協力会社に利用してもらうことで燃油コスト削減に協力している。
さらに同社では、協力会社に安定的な業務委託を行えるよう繁閑期の重ならない異業種の輸送業務の獲得を図る。食品業界をはじめ、幅広い荷主を対象に貨物獲得に注力している。

共同印刷(本社・東京都文京区、藤森康彰社長)グループで物流部門を担当する共同物流(本社・埼玉県越谷市、新島貞次社長)では年間輸送量の約95%を協力会社や拠点地域の輸送会社に委託している。
共同印刷は2017年6月に創業120周年を迎え、それを機に、新コーポレートブランド「TOMOWEL(トモウェル)」とコーポレートメッセージ「共にある、未来へ」を導入。関わるすべてとともに良い関係を築き、未来を創り拓げていきたいという想いを込めた。その理念に則り、共同物流は安全で高品質な輸送というミッションを実現するため、パートナー企業とのコミュニケーション強化と緊密な協力関係の構築を進め、安全・品質向上と環境負荷低減に継続して取り組んでいる。

具体的には主要協力会社が参加する「安全品質環境会議」を毎年春夏2回(2月頃と9月頃)開催。同会議には毎回40数社前後が参加する。安全方針や輸送品質向上、環境負荷低減の取り組みを発表するとともに、法令改正時には啓発を図るなど必要情報を共有。業界動向や経営に資する講演も行い、同社と参加企業が意識を合わせ、連携強化を進めている。

特に9月は、地域の輸送会社を対象に「安全品質会議」を開催し、安全やサービス向上の研修を実施。さらに、3年前からは安全品質環境室の担当者が主要協力会社を定期訪問し、情報提供や協力要請を行うなど緊密なコミュニケーション構築を推進。輸送本部の担当者とともに事故対策や品質向上のノウハウ提供をきめ細やかに行う。

キリングループロジスティクス(本社・東京都中野区、戸叶弘社長)は〝運びきる〟というミッションを完遂するため、輸送協力会社との信頼関係構築を最重要戦略課題としている。北海道、東日本、西日本、九州の支社ごとに協力会社会を設け、協力会社との連携強化に取り組む。支社によって取り組み内容に多少の違いはあるものの、安全研修や現場パトロールの共同実施や、懇親会を定期的に実施している。

また、2016年度からは「全国輸送協力会役員会」を年1回開催。この会合では協力会社の経営者を招き、年度戦略の説明を行うほか、輸送力確保の取り組みや安全品質の取り組みを報告する。加えて外部講師によるセミナーや懇親会を実施することで、相互理解を深めている。同社では今後も直接のコミュニケーション機会を通じ、お互いの状況や考え方を共有し、緊密な協力関係の構築を図る。

エアコンなど家電品は手積み・手降ろしのため、ドライバー不足が近年顕著になっており、事業者との密接なコミュニケーションが欠かせない。ダイキン工業(本社・大阪市北区、十河政則社長)では、協力会社の組織として地区ごとに「物流協議会」を設置。事業者と一体となった物流改善活動に取り組んでいる。
協議会は1984年、物流本部が設置されたのとほぼ同時期に発足。関西地区の「ダイキン物流協議会」をはじめ、「東京物流協議会」、「名古屋物流協議会」、「福岡物流協議会」と4つの協議会が組織され、全国でメンバーは約110社。ダイキンの物流業務の99%を協議会メンバーが担っている。
年始には物流本部の方針説明および各エリアの重点取り組みを共有。例年5月には協議会主催による安全大会、10月にはダイキン主催で「全国物流サービス向上研修発表会」を開催する。また、ダイキンの各現場では毎月、協議会メンバーの実務者とのミーティングを開き、安全品質やトラブルについて確認している。

ダイキンの販売、生産のリアルタイムな情報や今後の見通しを協議会メンバーと速やかに共有し、物流施策に反映。2017年に関西地区でメガセンターを新設した際には、3PL事業者に運営委託範囲を広げる新体制に移行したが、事業者からの提案が活発になり、次の施策に活かせるなど好循環が生まれているという。

LIXIL(本社・東京都千代田区、大坪一彦社長兼CEO)では、ドライバー不足の一層の深刻化が予想される中、運送会社との協業関係を強化するため、2014年に「LIXIL運送事業者協力会(LPRO)」を発足させ、その活動の一環としてドライバーの作業負荷の軽減の取り組みを本格化させている。
LPROは全国16支部・会員企業約200社で構成され、現場配送の増加や構造的なドライバー不足、長時間労働の規制強化といった環境を踏まえ、ドライバーの顧客対応力の向上や安定した質の高い輸送力の確保、ドライバーの育成および作業負荷の軽減を目指し、各種活動を推進。荷扱い、マナー・安全、作業負荷軽減の評価メジャー、チェックシートを統一し、運用を開始した。
(2019年9月17日号)


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