郵便の土曜配達休止、来年10月にも実施か?
総務省は、普通郵便の土曜日配達を休止し、週5日配達に見直す方針を固めた。10月にも召集される臨時国会に郵便法改正案を提出し、法案成立後、一定の周知期間を経て来年10月から実施したい考え。ただ、かんぽ生命の不適切販売への批判が高まっている中、日本郵便のユニバーサルサービスの低下に対する不満がくすぶっており、とりわけサービス見直しによる人的リソースを「ゆうパック」など物流分野に再配置する戦略には、民業圧迫との批判が高まりそうだ。
サービス見直しで625億円のコストメリット
総務省の審議会である情報通信審議会の郵政政策部会は今月6日、普通郵便の土曜日配達の休止を含む郵便サービスの見直しを許容する答申案を了承した。これを受け同省は、27日までパブリックコメントを募集。意見集約を経て最終答申をまとめ、郵便法改正案を臨時国会に提出する予定。
郵便サービスの見直しの大きなポイントは2点。ひとつは土曜日の配達を休止することで、普通郵便の配達頻度を現在の週6日から週5日に減らすこと。2点目は、普通郵便の送達日数制限を現行の「差出日から原則3日以内」から1日繰り下げて「原則4日以内」とすること。
これにより日本郵便は、土曜日に出勤している約5万5000人の配達員のうち約4万7000人の再配置が可能になるほか、送達日数の繰り下げにより、深夜に郵便の区分作業を担当する社員約8700人のうち5600人の再配置が可能なる。また、こうした制度改正が実現した場合、プラス625億円程度の収益改善効果が見込めると試算している(週5日配達で約535億円、送達日数繰り下げで約90億円)。
法人・個人の約6割は「やむを得ない」と回答
日本郵便はこうしたサービス水準の見直しを要望する理由として、電子メールの普及などによる郵便物数の減少、単独世帯数の増加による配達効率の悪化などに加え、労働需給のひっ迫による人件費の高騰などを挙げており、このままのトレンドが継続すれば郵便事業の収支が赤字化するとしている。
一方、こうしたサービス水準の見直しについて、総務省が行ったアンケートでは、法人・個人とも「やむを得ないと思う」との回答が約6割を占めており、一定の理解が得られるとの判断のようだ。
ヤマトは痛烈批判、国会審議はどうなる?
しかし、日本郵便では制度改正によって生じる郵便分野の人的リソースを、成長分野と位置づける「ゆうパック」など物流分野に振り向ける方針で、こうした戦略に対しては改めて批判が高まることも予想される。ことに、かんぽ生命の不適切販売に対する批判が高まっているタイミングであり、今後予定される国会審議でも、改めてユニバーサルサービスの意義が問い直されることも考えられる。
総務省が今年3月から4月にかけて実施した意見募集では、ヤマト運輸が「(日本郵便の要望は)もっぱら提供側である日本郵便の負担軽減を目的とするものであり、郵便サービスが国民にとって必要不可欠なユニバーサルサービスであるとの視点が欠けている」「競合領域においてサービスを維持するために、独占的領域においてサービスを劣化させることに他ならず、日本郵便の成長市場への投資が主目的になっている」などと痛烈に批判しており、今後も批判を強めることが考えられる。
(2019年8月29日号)