「全体に利益循環する経営を」=運輸労連・難波委員長
全日本運輸産業労働組合連合会(運輸労連、難波淳介委員長)は7月30日に記者会見し、同月4~5日に盛岡市で開催された定期大会で決定した運動方針などを報告した。
冒頭、難波委員長(写真)は「平成の最後の2年間で、トラック運輸産業が抱えてきた課題がようやく机の上に広げられた気がする。物流クライシスの顕在化で、トラックは全産業平均よりも2割長く働いても、2割低い年収しか得られず、そうでありながら社会生活を支えるインフラになっていることが、社会的認識として高まってきた。その結果、昨年末の貨物自動車運送事業法の改正に至ったわけだが、そこで平成が終わってしまった。この机の上の広げられた課題を今後どう解決していくかが、これからの2年間の重要な運動方針になる」との認識を示した。
また、「課題解決のためには、サプライチェーン全体で商習慣を見直し、適正な運賃収受、労働条件の改善を図ることが重要だが、トラック運輸産業は99%の中小下請けと1%の大手元請けで構成されている。この多層構造がなければ、物流システムが維持できないことが明らかになってしまっている以上、大手元請けは多層構造に意識を置きながら荷主と交渉する必要がある。料金改定を行う場合でも、自らの会社組織だけでなく、物流システム全体に利益が循環する経営を変えていかなければならない」と語った。
商習慣の見直しについては「多発する労働災害の7割が荷主の庭先で起きている実態がある。荷主の庭先でのフォークリフトによる荷役作業などが、どの程度、書面化された契約に基づくものなのか、あるいは契約がないまま古くからの商習慣で行われているかは分からないが、いずれにしてもサプライチェーン全体で共同歩調をとりながら商習慣を見直すことが大事だ」と述べた。
事業法改正で元請け責任はより重くなる
改正事業法の柱のひとつである「荷主対策の深度化」が7月からスタートしたことについて、「荷主対策の荷主には元請け事業者も含まれており、その意味では元請け責任がますます重くなってきたと認識している。まずは各大手の単組が意識を変えていくことが必要であり、運輸労連としても大手企業の代表者との懇談会の場などで訴えていきたい」とした。
また、今年度中にも告示される見通しの「標準的な運賃」の効果については「運賃交渉力がない事業者にとっては使えるものになると思う。対真荷主よりも元請け・下請けの多層構造の中で有用になる可能性がある」と指摘した。予想される運賃水準について、世永正伸副委員長は「2次下請け、3次下請けの実運送業者が標準的運賃を収受して報われる形にしないと意味がないと伝えている」と述べた。
このほか、外国人ドライバーの解禁について難波委員長は「運輸労連としての基本スタンスは反対だが、仮に解禁される可能性が高いのであれば、どういうやり方がいいのか、また、解禁された場合に産業特性上、どのようなリスクがあり、そのリスクを乗り越えるためには何が必要なのかを、今の段階から議論しておく必要がある」との見解を示した。
(2019年8月6日号)