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レンタルパレットの需給バランスが〝崩壊〟

2019.05.09

「ホワイト物流」実現の切り札とも期待されているパレット輸送に大きな異変が起きている。初の10連休となったゴールデンウィークに突入する前日の4月26日、レンタルパレット最大手の日本パレットレンタル(JPR、本社・東京都千代田区、加納尚美社長)は緊急会見を開き、レンタルパレットの需要バランスが崩れたことで、同25日から既存顧客に対し貸し出し枚数を一律30%カットするとともに、新規の受注を当面の間、停止したことを発表した。パレット需要の拡大を進む一方、回収が追い付かず、大幅な需給ギャップが顕在化したことが理由だが、背景には大型連休を前に卸や小売りがパレットに商品を載せたままの状態で在庫を積み増していることがある。会見で加納社長(写真)は「普段はなかなかパレットに目が向けられることはないが、パレットが切れると物流は止まる。物流界全体の問題として課題解決に協力して欲しい」と訴えた。

需要増に加え、回収率が想定を下回る事態に

JPRの説明によると、4月中旬から需給ギャップが徐々に顕在化し、22日以降のオーダーから顧客の希望通りの枚数を納品できない状態に陥った。こうした状況を受けて同社は、既存顧客への貸し出し枚数を一律30%カット、新規の受付けについては当面停止する旨の社長名での文書を25日付で関係先に送付した。

同社のレンタル需要はここ数年、ドライバー不足によるパレット荷役の必要性の高まりから前年比108~9%で推移。今年度については、前年比110%の需要予測を立て、パレットの新規調達にも力を入れていた。しかし、4月に入ってからの需要は予測を上回る115%で推移。さらに、回収については107%の予測を立てていたところ、実際には104%しか回収が進まず、出荷~回収・メンテナンス~再出荷というサイクルがうまく回転しなくなり、需給バランスが大きく崩れてしまった。メインユーザーである加工食品メーカーでは、一部製造ラインをストップするなどの影響も起きているという。

背景には卸の物流現場での人手不足が…

回収枚数が想定を下回った原因のひとつに、卸や小売サイドでの人手不足があるという。

JPRのレンタルパレットは、加工食品業界や日雑業界での利用が多く、とくに加工食品業界では製造から販売までのサプライチェーンを支える基礎インフラとして不可欠な存在。

ただ、ここ数年は、食品卸が物流センターにおける仕分け要員不足などから、1パレットに少量のワンアイテムを載せた状態での出荷(いわゆるミルフィーユ出荷)を求めることが増えるとともに、卸のセンターなどでパレットに商品を載せたまま在庫することが増えた。今回、そうした基本的なトレンドに加えて、大型連休中の欠品を避けるために卸や小売が在庫を多めに抱えようとする動きが進み、結果としてレンタルパレットの需給サイクルが大きく崩れることになった。加納社長は会見で「事前にある程度の需要増は予測していたが、実際はそれを大幅に上回ってしまった」と述べ、「見通しが甘かったとの指摘は真摯に受け止める」とした。

JPRはパレットメーカーへの増産、同業他社への協力を要請

こうした状況に対し、JPRではパレットメーカーに対して急遽発注をかけるなど新規調達に努めているが、国内での製造ラインが限られていることに加え、パレットメーカーには他社からの製造依頼も増えており、すぐに増産に応じることは難しい状況だという。また、JPRでは同業のレンタルパレット会社にも協力を要請しており、いまのところ日本パレットプール(NPP)、ワコーパレット、日建リースの3社がパレットの貸し出しに応じている。このほか、韓国のレンタルパレット会社に対し協力を要請しているほか、海外で使われているJPRパレットの回送などにも注力。JPR社員も休日を返上して「1枚でも多く回収しようと全国を駆け回っている」という。

今年度中は不安定な供給状態が続く公算

だが、こうした努力にもかかわらず、事態は急には好転しない公算が高いようだ。大型連休が明けても、盆休暇前の繁忙期や10月に予定される消費増税前の駆け込み需要、年末繁忙期などが続くため「今年度いっぱいは供給が不安定な状態が続くだろう」(加納社長)という。

JPRでは課題解決に向けて、パレットの海外調達の拡大や管理ソリューションのさらなる高度化などを通じて「中長期的には安定的な運営を目指していく」(同)としている。ただ、今後は「ホワイト物流」の切り札とも目されるパレットの効率的な運用を実現していくためにも、物流界全体でパレットの重要性に目を向けていくことが不可欠となっている。
(2019年5月9日号)


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