ズームアップ 日EU・EPA、輸入通関時の書類の扱い明確化
日EU・EPA(経済連携協定)発効からまもなく3ヵ月――。同協定の原産地証明の手続きでは、事業者自らが締約国内の原産品であることを証明する書類を作成する「自己申告制度」のみを採用。その利用に際し、輸入者からは「通関時に税関にどういった資料を提出したらいいのか分からない」という声も聞こえてくる。財務省・税関では同協定の利用促進に向け、輸入申告時の提出書類の扱いについての周知文を公表するなど、輸入者の不安解消に乗り出している。
税関が提出書類にかかる周知文を公表
日EU・EPAに基づき関税上の特恵待遇を要求する輸入者は、自己申告制度のもと、その貨物が協定上の要件を満たす原産品か否かに関する資料(原産品申告書等)を税関に提出しなければならない。輸入者からは輸入通関時に資料がそろっておらず、特恵待遇が適用されないのではないかという不安も見られる。
こうした中、税関では3月14日にホームページで「輸入申告時に税関に提出する貨物の原産地に係る説明(資料)について」と題する周知文を公表。貨物が原産品であることを示す資料は輸入者が入手できる範囲で提出し、輸入通関時に当該資料を提出できない場合でも特恵適用がただちに否認されるものではないとし、事実上、貿易事業者が抱える不安に対し、税関から一定の配慮が示された格好だ。
ただ、輸入通関後、税関は必要に応じて事後確認を行うことがあり、仮に特恵否認された場合には、その不利益は納税義務者である輸入者が負うケースが多い。このため、輸入通関時の税関への提出要否に関わらず、EU所在の輸出者に対して原産品であることを事前に確認したり、必要に応じて取引契約にその旨を盛り込む等、自衛のための一定の取組みも必要となり得る。
また、日EU・EPAでは、日本から輸出した貨物について、EU加盟国の税関が必要に応じて原産性確認を行うことがあり、輸出国(日本)の輸出者に対して裏付け資料等の確認を行う必要があると判断した際には、日本の税関に対し協力を要請する。このEUからの税関を通じた“検認”についても輸出者の懸念が広がっている。
これに関し財務省・税関では、「EUと輸出者の間に立つにあたっては、税関が有する原産性判断にかかる知見に基づき、どういった資料を提出すれば原産性の証明に十分かといった輸出者からの相談にも可能な限り応じつつ、コミュニケーションをとりながら対応していきたい」としている。
(2019年4月18日号)