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越境EC貨物の輸入で申告誤りが増加

2021.11.25

越境EC貨物の輸入申告の誤りが、脱税につながるリスクが懸念されている。ECプラットフォーム事業者のフルフィルメントセンターを経由して日本の消費者に商品を販売する場合、海外の販売者は、購入者が注文して支払価格が確定する前に日本のEC倉庫に商品を輸送しており、通常の輸入貨物のようにインボイス価格により課税価格を計算することができない。こうした取引に適用される適正な方法で計算した課税価格よりも低い価格で輸入者が申告しているケースがあり、財務省関税局では注意を喚起している。

適正な方法による課税計算が必要

輸入貨物の課税価格の計算は、原則として取引価格に基づく。「取引価格」はその輸入貨物について現実に支払われたまたは支払われるべき価格(現実支払価格)に運賃等の額(加算要素)を加えた価格を指し、インボイスその他現実支払価格が確定できる書類および加算すべき運賃等の額が確認できる書類に基づき課税価格を計算する。

一方、海外の販売者がECサイトを通じて日本で商品を販売する場合、購入者が注文、代金を支払う前に貨物は日本のEC倉庫に輸送され、輸入の時点では“買い手”が存在しない。こうした取引での輸入貨物はインボイス価格により課税計算を行えない、いわゆる「輸入取引によらない貨物」に該当する。

「輸入取引によらない貨物」については、取引価格により課税価格を計算することができないため、「同種または類似の貨物に係る取引価格による方法」「国内販売価格に基づく方法」「製造原価に基づく方法」「その他の方法」のいずれかを順次適用し、課税価格を計算することが関税定率法で定められている。

しかし、日本の輸入者がこうした適正な方法で課税計算をせず、輸出者が作成したインボイスに基づき日本の輸入者が申告し、適正な方法により計算した課税価格、たとえば、販売(予定)価格から輸入貨物の日本到着後の費用等を控除した価格との差額が申告漏れとなっているケースが増えているという。

取り締まりに加え低価申告も課題

新型コロナウイルス感染症を背景とした越境ECの急拡大により、輸入小口貨物の小口化が進展し、中でも、ECプラットフォーム事業者の提供するサービスを介したSP貨物が急増している。2019年から20年にかけてSP貨物の輸入許可・承認件数は1・5倍に増加。不正薬物の摘発状況をみると、SP貨物・国際郵便が9割弱を占める。

税関職員のマンパワーが限られる中、急増するSP貨物の取り締まり強化が喫緊の課題だが、加えて問題となっているのが、こうした越境ECを利用した貨物で関税評価のルールを無視して申告が行われていることだ。悪意をもって、適正な方法で課税計算せず、低価格で申告した場合には重加算税が課せられる可能性もあり、注意を呼びかけている。
(2021年11月25日号)


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