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鴻池運輸が大阪木津市場で食品加工場を竣工

2019.04.09

鴻池運輸(本社・大阪市中央区、鴻池忠彦社長)は3日、「和食材輸出ビジネスのプラットフォーム構築構想」の一環として、大阪木津市場内で建設していた水産物の食品加工場(写真)の竣工式を開いた。各種加工・調理、凍結までを1ヵ所で行うことができ、機械化設備を駆使した、業界初となる和食材の高品質な複合加工・輸出拠点として、今月中旬から稼働を開始。加工場で高付加価値な商品を開発し、和食材のニーズが旺盛なアジアをターゲットに輸出拡大を目指す。

和食材の複数の加工工程を1ヵ所で

加工場は大阪港、関西国際空港にも近い輸出に最適な立地と、高品質な食材の調達に特長がある大阪木津市場の敷地内に建設した。鴻池運輸の流通加工や生産請負のノウハウも活用し、和食材の複数の加工工程(切る・煮る・焼く・蒸す等)と新たな高度急速冷凍加工を組み合わせた高級和食食材の加工・輸出拠点として稼働させる。

近年、和食の世界的な認知と注目度の向上、日本政府による和食文化の海外ブランド戦略推進の機運の高まりを背景に、和食材の鮮度・品質を維持した安全・安心な輸出への注目が集まっている。鴻池運輸では定温物流サービスの技術向上の観点から、冷凍技術に関する研究を進め、特に水産魚介類の鮮度保持について実証実験を重ねてきた。

これらの成果を生かしつつ、高級和食食材の輸出ビジネスの事業化に向け、プラットフォーム拠点となる加工場を建設したもの。延床面積約1022㎡の鉄骨構造の2階建て(設計・施工は三和建設)。1階を加工・製造エリアとし、2階に入り口を設け、場内は一方通行の動線を確保。魚のウロコ取り、三枚おろし、皮取り、スライス、真空パック包装など各種機械化設備を導入している。
なお、フードディフェンスの観点から、監視カメラの設置や入退場時の指紋認証システムも取り入れている。

「ハイブリッドアイス」で急速冷凍も

加工場の目玉となるのが、高濃度塩水(23・5%)を瞬時に凍結できる「ハイブリッドアイス」製氷機。ハイブリッドアイスにより水産物の鮮度保持期間を延ばせ、旬に仕入れて冷凍保存できるようになる。冷凍にかかる時間を大幅に短縮し、解凍の際に血抜きの必要がなく、解凍後のドリップもほとんどないので、刺身でも活魚と同様な新鮮さを味わえる。

直会で鴻池社長は、「木津市場は大阪の食の台所として300年以上の歴史があり、ブランド力と独自の販売網を持つ。海外では日本食がブームで、政府も和食を世界に広め、日本の食文化を海外に積極的にPRしていこうとしている。そうした中、当社は和食材を輸出、販売するためのプラットフォームの構築を目指している」と事業化の背景を説明。

「1ヵ所で様々な加工だけでなく、冷凍も行える加工場を備えることで特色のある市場になりうる」とし、各種加工・調理の機械化設備の導入により人への依存度を下げるとともに、安全衛生の面では「稼働後2年以内に、HACCPの認証取得を目指す。調理の際には高熱、刃物を使うため、細部にわたり安全最優先の設計、運用を図っていく」とした。

「人」と「絆」、新たな価値の創造へ

結びに、KONOIKEグループの企業理念である「『人』と『絆』を大切に、社会の基盤を革新し、新たな価値を創造します」に言及し、「木津市場と当社の関係者、地域社会の人たち、加工場でつくられた食材を食する国内外の人たちと絆をつくり、社会基盤を革新し、新たな価値を創造できるよう市場の皆様と一体となって取り組みたい」と強調。

記者会見では、加工場建設の背景となった同社の定温物流サービスに触れ、「全国に14ヵ所の冷凍冷蔵倉庫を構えるほか、海外では米西海岸で3ヵ所の冷凍冷蔵を運営し、アジアではベトナム、中国、タイなどで展開している。定温物流はその入口と出口である、『冷凍技術』と『解凍技術』によってもっと付加価値を生むことができる」と展望を語った。
(2019年4月9日号)


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