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キユーピーが翌々日納品と検品効率化を年内導入

2019.04.02

キユーピー(本社・東京都渋谷区、長南収社長)では年内をメドに、受注翌々日納品と検品レス、検品効率化を拡大する。加工食品業界では受注翌日納品が一般的だが、リードタイムを1日増やすことでASN(事前出荷データ)の作成時間を創出し、納品先での検品レスを実現するもの。現在は一部の納品先との間でのみ運用されているが、ASNの送信方法をより簡便に見直すなどして、多くのルートで取り入れやすくする。これにより、納品先の作業効率向上やトラックバース待機時間の削減、運送会社の車両回転率上昇、および早期の物量把握による配車や人員の最適化が可能になる。物流危機、さらには1年後に迫る東京オリンピック・パラリンピック開催中の安定稼働につなげる考えだ。

今春には日本アクセスも導入予定

同社では2010年から翌々日納品、検品レスの検討を始め、13年1月に加藤産業との間で運用を開始した。従来は納品前日午前に受注していたが、納品前々日の夕方で受注を締切り、納品前日に出荷作業を行い、パレット積み商品の納品明細情報をASNとして作成。納品先である卸企業の物流センターへ事前に送信することで、荷受け側ではASNを自動入荷計上や伝票照合に活用して検品レスが可能となった。

その結果、納品先物流センターでは1回当たり20~40分、年間100時間に上っていた検品作業がなくなり、1時間ほどかかっていた納品作業時間が大幅に短縮。検品レス納品車両用の優先バースを設けることで、接車待機時間も従来の1時間から「待ち時間なし」へと改善された。出荷側でも、早期の物量把握と受注業務の平準化で出荷作業の効率化や安定的な配車が実現した上、定曜日納品による車両積載率の向上にも寄与した。

まずは、グループ物流会社キユーソー流通システム(KRS)の五霞営業所から加藤産業の羽生センターへの納品でスタートし、14年にはKRS関西SLC~加藤産業みなとセンターでも運用を開始。その後、三菱食品とも取り組みが始まり、昨年6月にはKRS厚木営業所~三菱食品横須賀フルラインセンターで導入したほか、今後は九州でも展開する見込みという。さらに、今春中には日本アクセスとも関東で、検品レスと翌々日納品を開始する予定にある。

業界全体への広がりを想定し、ASNの仕様については酒類・加工食品業界標準化推進会議の物流情報検討部会と日本加工食品卸協会の情報システム研究会から標準フォーマットとしての承認も受けた。ただ、現在の運用方法ではASNの作成作業などへの負担が大きく、導入ルートが限定的になってしまっていることが実状。そこで、より多くの納品先と翌々日納品と検品レスが導入できるよう、新たな運用の仕組みと標準フォーマットの作成に取り掛かる。

GW10連休は翌々日納品で対応

翌々日納品に限れば、既に昨年から繁忙期対応として、地域を段階的に広げながら実施してきた。まず、夏季繁忙期にはKRSの関東4営業所から関東甲信越1都9県へ納品される常温品を翌々日納品へ変更。続く年末繁忙期には対象を全国へ広げ、商品も3温度帯全てを翌々日納品とした。同繁忙期は12月27日にピークを迎え、近年でも類を見ない出荷量となったが、例年より車両が少なかったにも関わらず、欠車なく、配送できたという。同日には大雪に見舞われた地域もあったが、納品日を1日前倒しするなどして回避することもできた。

物流会社からも「非常に助かった」と歓迎の声が寄せられる一方で、「翌々日納品であっても検品があると納品先の作業時間やバース待機時間が発生してしまい、車両の回転率を上げにくい」との訴えもあった。ドライバー不足は翌々日納品だけでは解決できないとして、検品の効率化も本格化させ、「お得意先様に“運べない”といった多大なご迷惑をお掛けしない体制を目指し、ますます厳しくなる物流環境を乗り越えなくてはならない」とキユーピーロジスティクス本部の藤田正美本部長・上席執行役員は話す。

10連休となる今年のゴールデンウィーク期間中も昨年の年末繁忙期と同じ翌々日納品とする計画だが、新たな検品効率化の運用については「間に合わない」見通し。ただ、年内に運用を開始したい考えは強く、「働き方改革法案が成立し、運輸業は5年間の猶予期間が設けられたが、このままでは5年も持たず、3年勝負での改革が必要。とくにGWやラグビーW杯、天皇即位など国家的イベントが多く、東京五輪も控える今年は、重要な1年となる」と藤田氏は危機感を露わにする。

物流危機の回避には商慣習の見直しが必須

東京五輪の会期中は、道路状況のシミュレーションをもとにルートの変更や納品日時、配送ロットを調整し、対応する方針だが、臨機応変な判断が必要となる場面も想定される。そうしたケースでも、「翌々日納品と、検品効率化によるトラック稼働率の向上で対処を検討できる」と藤田氏は説明する。実現には、荷受け側の協力も求められ、オリンピック事務局による啓発活動と、各企業がそれを受けとめる必要性も訴える。この取り組みが業界全体に広がれば「物流を維持する一助となる」として、新たな検品効率化におけるASNも標準データ化する考え。

そうした中、翌々日納品と検品効率化への最大の課題となるのが、賞味期限の日付管理だ。問題の解決には業界のみならず消費者の理解も必要となる。キユーピーとしても自助努力で賞味期限の延長を進めており、一部商品では年月表示も導入し、拡大する方針にある。「消費者が知らない水準での日付や鮮度、リードタイムの競争が業界の製配販3層にわたるプレイヤーの体力を奪っている。商慣習や業務プロセスの見直しは、今後のデジタルトランスフォーメーションの考え方にも沿う」と藤田氏は指摘する。
(2019年4月2日号)


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