荷主企業の物流組織再編、「SCM本部」など本部機能への〝昇格〟増加
労働力不足などによる物流課題の顕在化を背景として、荷主企業が物流組織を再編・強化する動きが増えている。目立っているのは、「SCM本部」「物流本部」などへの〝昇格〟だ。運賃単価の上昇など支払物流費の上昇が避けられない中で、生産部門や販売部門との連携強化などを通じて、サプライチェーン全体の効率化を志向するトレンドがあるものと推測される。また、物流子会社を親会社に吸収する動きも増えている。子会社が担ってきた機能を本体に取り込むことで、意思決定スピードの迅速化などを図る狙いだ。
物流危機を背景に、増える物流部門強化の動き
本紙調査による、昨年9月以降に物流組織の再編などを実施または予定している荷主企業は〈表〉の通り。
この中で目立っているのは、物流関連部門の本部などへの格上げ。TOYO TIRE(旧・東洋ゴム工業)は19年1月に「SCM本部」を新設したほか、大建工業も2月に「IT・物流本部」を新設。ポッカサッポロフード&ビバレッジも3月に生産本部とロジスティクス部を統合して「SCM本部」を新設した。イオン系のアパレルメーカーであるコックスも、3月に財務経理本部を「財経・物流本部」に再編し、昨年9月に新設した物流部を同本部内に移管した。
4月に改編を予定している企業でも、本部制への昇格が目立つ。エバラ食品工業は4月に「SCM本部」を新設。タカラスタンダードも4月に「生産物流本部」を新設し、業務統括本部を改称したロジスティクス部を管轄する。このほか、三菱食品も「SCM統括」職を新設し、ロジスティクス本部、物流オペレーション本部、SCMサポート本部を管轄する体制に切り替える。
物流子会社の吸収や再編で意思決定を迅速化
一方、物流子会社に関しては、子会社が行っていた業務や機能を親会社に取り込む動きが増えている。
鉄鋼・金属商社の佐藤商事は18年9月に子会社である佐藤物流を解散し、同社の運送業務を本体に取り込んだ。また、ライオンは20年1月に物流子会社のライオン流通サービスを吸収合併することを決定。日本ガス(ニチガス)は19年5月に子会社のニチガス物流計算センターを本体に吸収統合する。
それ以外にも、伊藤忠商事は3月に伊藤忠ロジスティクスを完全子会社したほか、J‐オイルミルズは4月に物流関連子会社3社を統合して機能強化を図る。
こうした背景には、親会社本体との一体化などを通じて意思決定をスピードアップし、物流を取り巻く環境変化に迅速に対応する狙いがあると考えられる。
(2019年3月26日号)