グローバル荷主のSC高度化戦略は?=江崎グリコ
2018~20年度の中期経営計画で海外事業の成長基盤の確立とグローバルブランドの拡大を推進する江崎グリコ(本社・大阪市西淀川区、江崎勝久社長)。海外で生産していない商品は日本から海外のグリコグループおよび販売代理店に輸出しており、海外輸出売上げは売上高全体の2%程度だが、近年、順調な伸び率を示す。
17年にSCM本部ロジスティクス部輸出グループを新設し、製品輸出の改善の取り組みを強化。昨年10月からは、本社敷地内に新たな施設を立ち上げ、輸出商品のラベル貼り作業で障がい者を採用するなど、海外への輸出においてもCSR(企業の社会的責任)経営を追求している。
日本でしか生産していない製品を輸出
1932年に海外に初進出して以来、11ヵ国14拠点で事業を展開しており、重点地域であるアセアンでは17年にシンガポールに地域統括会社を設立し、タイグリコが菓子事業、グリコフローズンタイランド、インドネシアのグリコウイングスが冷菓事業を展開。インドネシア、マレーシアに販売会社を置き、菓子市場の拡大を図っている。
中国では上海江崎格力高食品有限公司が菓子類を製造販売し、EC事業にも注力。韓国では合弁会社のグリコヘテ社がポッキーを販売。北米では米国江崎グリコがポッキー、プリッツを、カナダではルウカレーの販売を行う。また、EUでは合弁会社のジェネラルビスケット・グリコ・フランスがEU版のポッキーを販売している。
19年3月期第2四半期決算によると、海外事業は対前年2ケタの成長。中国ではECの取り組みを強化した結果、EC売上高が前年比約8倍に上昇した。米国菓子事業でも売上高は14年度の4倍超に達する見込み。19年3月期通期では、海外売上高について前年比12%増の成長を計画している。
海外市場向けに、日本でしか生産していない菓子、アイスクリーム、加工食品、粉ミルク等は日本から輸出。17年に輸出業務を海外事業部からSCM本部ロジスティクス部に移管し、同部傘下に輸出グループを新設。日本からの製品輸出の改善のほか、海外主要生産拠点からの輸出・国内物流の改善支援の取り組みを本格化させている。
輸出先は香港、台湾、シンガポール、ベトナム、タイ、アメリカ、カナダで、主にアジア向けは大阪港、北米向けは神戸港を活用し、仕向地ごとに強みのあるフォワーダーを起用。近年、輸出は順調に増えてきたが、現地生産や海外工場からの輸出の増加に伴い、日本からの輸出は大きな伸びは見込んでいない。
ロットを高めるため、SKU絞込みも検討
海外向け商品はSKU数が多く、物量が少ないため、1つのコンテナに多品種のアイテムをケース単位でバラ積みにし、積載効率を向上させている。ただ、バンニング作業の効率化も重要課題と位置付けており、1コンテナに1アイテムがまとまる米国向けでシートパレットの導入もコストを勘案しながら検討している。
また、国内同様、海外輸出でも物流効率の視点からSKUの絞り込みを提案する。仕向け地ごとにSKUを絞りロットを高めることで、パレット化の可能性も高まるという。このほかグローバル入札の実施やバンニング拠点である大阪・枚方周辺で「前荷が食品でリーファーコンテナを使用する」輸入荷主とのコンテナラウンドユースも模索する。
なお、海外輸出品の35%は日本で現地表示のラベルを貼って輸出しているが、従来、ラベル貼り作業は外部委託していた。これを内製化し、本社敷地内の建物を一部改修し、障がい者が作業に従事する施設を昨年10月に新設。色分けや窓の設置など、障がい者が働きやすい空間に配慮した。
海外輸出品のラベル貼り作業は年間で約400万個で、2018年度はうち20%程度を同施設で行う計画。品質および生産性の向上支援に資するラベル自動貼付機、検品システムも導入しており、作業品質の向上につながっている。知的障がいや精神障がいを持つ社員を現時点で6人採用し業務を開始しており、19年度は10人程度の採用を予定するなど今後も拡大していく方針だ。
(2019年3月14日号)