メニュー

集配トラックの駐車規制緩和が加速

2019.02.14

トラック運送業界の「働き方改革」を支援するため、警察庁では昨年2月の通達で「直ちに取り組む施策」として「貨物集配中の車両にかかる駐車規制の見直し」を掲げた。全日本トラック協会(坂本克己会長)等の要望に応えたもので、早期の実施に期待が持たれている。「駐車規制」のトラック事業運営への影響、これまでのトラック協会の取り組み、集配トラックに配慮した先進的な取り組みなどをレポートした。

異業種との協力による「駐車規制」の緩和も提案

東京と神奈川で酒類を中心とした運送事業を手掛けている開真産業(本社・東京都大田区、海原俊治社長)では、集配中のトラックの「駐車規制」が事業運営に大きな影響を及ぼしている。これまでに約260回の取り締まりを受け、かかったコストは約500万円近くまで上る。また、駐車場探しによるドライバーへの高ストレスからくる事故の懸念や集配作業効率の低下など、働き方改革の面でもドライバーによる負担が大きくなっているという。

警視庁では昨年4月から東京都港区や品川区、渋谷区などに集配貨物車専用の駐車スペースを試験的に設けたが、海原社長によると「駐車スペースを設けたことは歓迎すべきことだが、その近くに配送エリアがなければ意味がない」。さらに、「例えば集配中に“20分待機します”というステッカーを貼って、表示されている時間を超えた場合に取り締まりの対象とするなど集配貨物車両の路上駐車を少しでも“解禁”する施策が必要だ」と指摘する。

また、運送業界だけではなく異業種とも連携していくことを提案する。「クリーニングやお弁当、おしぼり業界など自家用車で配送を行っている企業とも連携し活動を進めいていく必要がある」との考えだ。

駐車スペース増も新たなルール作りが必須

警視庁は今夏以降、東京23区を中心に駐車スペースを約100ヵ所に広げる予定だが、運用面での課題も指摘される。現在、都内で設けられている駐車スペースは「貨物の積み下ろし」に限って駐車することが認められているため、一般乗用車を使った貨物積み下ろし作業も行われる。例えば、一般乗用車のドライバーが自分の荷物を友人に届ける理由で駐車したり、マナー、モラルを無視し、何時間もトラックを駐車してトラック同士の積み替え作業を“独占”して行っている事業者もいる。東京都トラック協会(浅井隆会長)で駐車対策問題を担当する物流政策委員会委員長の原島藤壽氏(カンダホールディングス取締役専務)は「駐車スペースでの集配中のトラックの駐車時間が事業者間に浸透していない。みんながルールを守れば課題解決につながる」と話す。

カンダホールディングスでは、駐車規制の対策として、有料駐車場を使用することを徹底し、昨年の取り締まり回数は現金輸送やドラッグストアの配送トラックなど7回のみに抑えられた。ただ、「有料駐車場が集配先から遠い」「有料駐車場に空きがない場合の対策」などの課題もある。原島氏は「緑ナンバーは公共性の高い業務車両。20分以内の集配作業は取り締まりを免除してほしい」と訴えるも、「違法駐車により緊急車両が通れなくなる、渋滞が起こる道路もあり、規制が行われることはしかたがない」と一定の理解を示す。

都内100ヵ所以上に貨物専用駐車スペース設置へ

東ト協は昨年12月、警視庁に駐車規制緩和地区の要望書を提出。東ト協と全国物流ネットワーク協会(森日出男会長)に加盟する業者にアンケートを取り、都内122ヵ所に集配貨物車両専用駐車場の設置を要請した。現在では、港区や品川区、渋谷区などの一部区間で貨物車専用駐車場が試験的に導入されており、警視庁は今後、約100ヵ所まで広げていくと公表したが、地元住民からの要請もあり、全ての要請地区で緩和されるとは限らない。また、白ナンバー車による駐車スペースの利用問題の解決や「20分以内の駐車時間」の徹底が必要となり、今後の動向が注目される。

京都で全国初となる駐車規制緩和

京都府でも駐車規制の緩和が進んでいる。京都府警は昨年12月17日から、京都市中京区の御池通約1・5㎞区間で集配トラックなど貨物車による駐車を全国で初めて認めた。道路には「集配中の駐車は除く」と補助標識を設置し、午前6時~午後8時の間は貨物車に限り自由に駐車することが可能となった。
これに先立ち京都府トラック協会(荒木律也会長)は、加盟している事業者に対し駐車規制に関するアンケートを実施。緩和区間を設けてほしい道路のひとつに御池通を挙げた。今回の規制緩和により、会員企業からは「(取り締まりを回避するための二人体制から)一人体制での集配業務が可能となり、他のエリアに人を回せるようになった」、「取り締まりに注意するあまり、(駐車時間を短くするため)少量の荷物しか運べなかったが、一度に荷物を運ぶことができ労働時間が短縮された」など好評だ。

現在は車線が広く、交通量が比較的少ない御池通の区間のみで規制が緩和されているが、京ト協はさらなるエリア拡大を要望している。同協会の井尻憲司氏は「細い道だが商店や飲み屋が多い河原町や烏丸通でも駐車規制が緩和されることを期待している」と語った。
(2019年2月14日号)


関連記事一覧