不二製油が関東拠点開設で地域在庫体制完成
不二製油(本社・大阪府泉佐野市、大森達司社長)は今年8月、センコー加須PDセンター2号倉庫(埼玉県加須市、写真)内でランテックが運営する冷凍・冷蔵倉庫エリアに新拠点を開設し、エリア在庫体制へのシフトをほぼ完了させた。今後は輸送ネットワークの見直しでBCPやドライバー不足への対応を強め、高品質かつ高付加価値なサプライチェーンの確立を図る。
BCPなど背景にエリア在庫化へシフト
同社では従来、大阪の自社倉庫で物流を管理して各消費地へ直送していたが、設備更新や物量増への対応、倉庫用地の工場転用などを目的として、2005年の北港を皮切りに物流業務のアウトソーシングを推進。さらに、災害発生時における安定供給体制の必要性から、大阪のみならず、消費地である関東や、輸送が長距離となる北海道・九州でも、在庫拠点の開設を進めてきた。
具体的にはパートナー物流会社と協力する形で拠点を開設。現在、関西では本社・阪南事業所に近い外部倉庫で常温・定温品を、大阪市此花区北港で冷蔵・冷凍品を保管して、関東では埼玉県杉戸町に冷凍品、横浜市鶴見区大黒町に常温品を在庫し、九州は福岡県久山町、北海道は石狩市に3温度帯倉庫を構えている。関東の冷蔵品についてはこれまで北港の冷蔵倉庫から直送していたが、加須PDセンター2号倉庫の新設に伴い、同所への委託を決めたもの。
生産部門ロジスティクス部の北郷亨部長は「当社の商品は厳格な温度管理が求められる上、チョコレートなどの臭いの強い商品や、大豆製品などの臭い移りを嫌う商品もあり、扱いが非常にデリケート。有事に急遽、外部倉庫を借りることが難しく対応に苦慮していた」と振り返る。災害時には救援物資として供給を求められることも多く、エリア在庫を持つことでBCP対応力を高めるとともに、平時においてもより安定的な商品供給が可能になり、顧客満足に繋がったという。
ISOタンクコンテナによる輸送にも着手
輸送面でも見直しを進める。とくに、計画輸送を行う拠点間の在庫移送では、輸送効率の向上とドライバーの労務改善のため車両のトレーラ化を推進。これに合わせて、バラ積みからパレット積みへと見直すことで積卸し時間も短縮を図った。パレットは当初自社で用意したが、資材の管理や回収が負担となったこともあってレンタルパレットへシフト。生産工場ごとに切り替えを進め、昨年には全拠点がレンタルパレットでの運用となった。
その上で、今後は船便による無人航行も拡大したい考え。現在、大阪から北海道、沖縄向けの全温度帯商品と、大阪から福岡向けの常温品をフェリーで輸送するが、油脂などのバルク品についても、内航船の手配が困難化していることに加え、タンクローリーの長距離輸送もドライバー不足の影響を受けていることから、新たにISOタンクコンテナを利用したRORO船での輸送に着手する。まずは今月から来月に掛けて、阪南事業所と千葉工場間の原料をISOタンクコンテナで輸送し、品質やコンテナラウンドユースなどの課題を見極めた上で、納品先への直送を含めた水平展開の可能性を検証していく。
鉄道も以前は利用していたが、災害時の影響を大きく受ける上、輸送枠の確保が難しいこと、リードタイムの増加などを理由に、トレーラ化と船便に注目。北郷部長は「自然災害は必ず起きる前提で考えなくてはならない」とした上で、「ドライバーの長時間労働を是正することで、ドライバーにやさしい会社を目指したい」と話す。
業務用チョコレート油脂で世界トップ3
不二製油は、「油脂事業」「製菓・製パン素材事業」「大豆事業」の3本柱で事業を展開する不二製油グループの中核会社として、国内における製品開発や生産、販売の大部分を担う。工場は本社・阪南事業所を中心に関西で3拠点、関東で3拠点を稼働し、主要納品先は製菓メーカーや加工食品メーカー、食品卸など。国内出荷量はほぼ横ばいで安定しており、昨今のブームを受けてチョコレート関連品が好調という。国内食品市場は少子高齢化で縮小傾向にあるが、「当社製品が使われる菓子やデザートは“別腹”。長期的に見ても一定の需要はある」と北郷氏は説明する。
製油業界では比較的後発にあるものの、他社にない商品やビジネスモデルを開拓し、育てることで成長を遂げ、業務用チョコレート油脂では世界トップ3に入る。「この独自性が当社の文化でありポリシーでもある」と同氏。不二製油グループでは、『ものづくり』に加え、その商品や技術にストーリーが加わった『ことづくり』を重視しており、「物を届け、贈る役目であるロジスティクスからも、様々なストーリーに関わっていきたい」と意欲を示す。
(2018年10月16日号)