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時短ガイドライン、荷主の理解が必要=トラック中央協議会

2018.10.02

国土交通省と厚生労働省は9月27日、「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」(座長=野尻俊明・流通経済大学学長)と「トラック運送業の生産性向上協議会」を同時開催した。トラックドライバーの長時間労働是正に向けたパイロット事業の成果を取りまとめたガイドライン案について、トラック側の委員は物流の維持に向けた荷主の理解・協力の必要性をあらためて強調。荷主側の委員は、改善策に対するサプライチェーン関係者の共通認識の指標や取り組みのメリットの明確化を求めた。

7つのステップで、荷主と運送業者が改善へ協力

今月中にはガイドラインの内容を確定し、公表。年度内に開催する各地の「取引環境・労働時間改善協議会」を通じて荷主団体に周知を図る。併せて荷主と運送事業者を対象とするセミナーを全国数ヵ所で開催し、啓発活動を展開していく。

協議会の開会にあたり挨拶に立った国交省自動車局の奥田哲也局長は「16~17年度に全国で実施した協議会のパイロット事業の成果を取りまとめたガイドライン案を作成した。荷主と運送事業者が改善に向けて活用できるように優良事例の定着と横展開を図っていきたい。ドライバー不足に対応し、労働環境の改善や物流生産性向上に取り組むことが喫緊の課題だ」と表明した。

ガイドライン案では、荷主と運送事業者が協力するための、①荷主と事業者の双方がドライバーの労働条件改善の問題意識を共有、②労働時間・荷待ち時間の実態を把握、③荷待ち時間や長時間労働の原因を検討・把握、④荷主と事業者双方が業務改善を実施、⑤荷主と事業者間で改善のための応分の費用負担を検討、⑥改善の成果を測定するため指標を設定、⑦指標の達成状況を評価してPDCAサイクルを推進――という7つのステップを提示。

長時間労働の主な原因として「発荷主の出荷時間の遅れ」「発荷主からの配車指示の遅れ・突発性により計画的配車ができない」「発荷主の要求するリードタイムが短すぎる」「着荷主の庭先において荷役に時間がかかる/荷待ち時間が発生する」「高速道路を走行せず、一般道路を走行」などを分析。それに基づき、個々のパイロット事業から抽出した具体例とともに13のソリューション〈前ページ・表〉を提示した。

これに対し、全日本トラック協会の辻卓史副会長(鴻池運輸)は「今回のガイドライン案に示された、具体的できめ細やかな改善策を実行しなければ、物流は立ち行かなくなる。モーダルシフトが進展しても両端の配送はトラックが担っており、日本の物流のほぼ100%にトラックが関与している。(ドライバーの労働環境の)改善に取り組まなければ、我が国経済の健全な発展ができないことを荷主にも理解していただきたい」と強調。

荷主側からは、三菱商事ロジスティクス総括部長の檜山充氏が「サプライチェーンには上下左右に多くの関係者がおり、荷主が直接向かい合う(元請けとなる)トラック事業者の向こう側にも実運送業者や着荷主など多くのステークホルダーが存在している。改善案を提示しても、それがどう伝わっていくのかが不明確だと効果が乏しい。関係者一同の共通認識のための指標が必要」と指摘し、改善へのモチベーションとなる〝メリット〟の明確化を提言した。

働き手側からの意見として、交通労連の山口浩一中央執行委員長が「トラック事業者が荷主のコンペで、受注のための競争力を上げるためにドライバーの労働条件に不利なしわ寄せがあってはならない。ガイドラインの活用も重要だが、場合によっては荷主と事業者の1対1の関係だけでなく、運輸局のような公平性のある第3者機関が関わることも必要ではないか」と提案した。

コンサルティング事業を16地域で実施

このほか協議会では、今年度より地方協議会の枠組を活用し、長時間労働是正への取り組みを支援するコンサルティング事業について、16の実施地域(北海道、青森、秋田、東京、新潟、富山、静岡、愛知、岐阜、大阪、和歌山、広島、山口、香川、宮崎、鹿児島)を決定したことを報告。また、農水省担当者が農産品物流の課題解決に向けた農産物パレット推進協議会の取り組みを紹介した。

パレット化に関して、全ト協の辻副会長は「積載率が下がることを理由に敬遠する荷主がいるようだが、効率性や時短を実現するにはパレット化が不可欠」と強調。運輸労連の難波淳介委員長は「パレット化で荷役の負担が軽くなれば女性の活用が広がっていく」とし、標準化とコスト負担について課題を提起した。
(2018年10月2日号)


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