バンテックが「テレワーク」を全社的に導入へ
バンテック(本社・川崎市川崎区、児玉幸信社長)は「働き方改革」の一環として10月から、事務職、営業職などグループ社員約900人を対象にテレワークを導入する。月間の全勤務日数の2分の1を上限とし、週1回は自宅やサテライトオフィスなどでのテレワークを推進する。柔軟な働き方により業務の生産性を高めるとともに、優秀な社員の離職防止や採用面でのアピールが期待できるほか、出社が困難な災害時にも業務の停滞を防ぐメリットも見込まれる。
実施場所は自宅、サテライト・タッチダウンオフィスなど
2016年夏から育児・介護を行う社員を対象とした在宅勤務のトライアルを開始し、17年4月に育児・介護を行う社員のための在宅勤務制度を定めた。以降、導入対象や在宅勤務以外の形態のテレワークを拡大するため、前提となる環境整備として業務の棚卸しや書類のペーパーレス化などを進めてきた。
昨年7月には、鹿児島県錦江町が実施主体となり、廃校になった中学校をサテライトオフィスとして開放、企業を誘致する「お試しサテライトオフィスでの体験ワーク企業」に応募。社員4人が体験ワークに参加し、本社と模擬サテライトオフィスをスカイプで結んだオンライン会議をトライアルした。
同じ時期に、経営トップを対象としたテレワークに関するセミナーに児玉社長が参加し、会社として本格的に取り組む方針を固めた。17年末から営業職などテレワークを取り入れやすい部署を抽出し、今年1~3月にかけて週1回を目安にプレトライアルを実施。そこで出された意見や課題を踏まえ、8月にテレワーク勤務細則を制定した。
「間接員」と呼ばれる、直接現場業務に従事していないグループ社員約900人を対象に、10月から全社的にテレワークを導入する。実施場所は、自宅のほか企業が運営するサテライトオフィス、社内のタッチダウンオフィス(他のオフィスの社員が作業できる環境を整えた場所)、カフェ等も可能とする。
フレックス制度の活用、勤怠管理で「働き過ぎ」を防止
テレワークの希望者は上長の承認を得た上で、テレワーク実施申請書を随時提出することができ、有効期間は当該年度とする。実施日は始業時、就業時にメールで上長に連絡。テレワーク中は、会社支給のスマートフォンやスカイプで会社と連絡が取れるような状態にし、チャットや電話、ビデオ通話なども活用する。
情報セキュリティに関しては従来から厳しい社内管理を行っており、テレワークに関しては、モバイルUSBで職場のシステム環境にアクセスできるようにし、会社のパソコンの持ち出しは申請が必要。今後、申請手続きの簡略化も検討するほか、実施していく中で出された課題には臨機応変に対応していく。
テレワークによる「働き過ぎ」を防ぐため、既に導入済みの「フレックス制度」との併用で労働時間を調整したり、パソコンのログオン、ログオフの記録による勤怠管理を実施。テレワークの実施は月間の全勤務日数の2分の1という上限を設定し、この範囲内であれば従来の通勤手当は全額支給する。
「テレワーク・デイズ」に参加、台風発生時にも有効
バンテックでは2017年1月に働き方改革を推進する専門部署として「働き方推進室」を人事部内に設置。今年度からは、戦略イノベーション本部ブランド&マーケティング戦略部に「働き方改革グループ」と「調査・マーケティンググループ」を置き、取り組みを推進している。
7月23~27日の「テレワーク・デイズ」には特別協力団体として参加。戦略イノベーション本部を中心に24日の「テレワーク・デイ」当日は全日または半日テレワークを実施し、サテライトオフィスとタッチダウンオフィス、オンライン会議や社内SNSの利用をトライアルした。
同本部ブランド&マーケティング戦略部調査マーケティンググループの仁多見智恵子課長は「働きやすい環境を整えることで、優秀な人材の流出を防ぐことができる」とテレワークの人材定着の効果を指摘。同グループの平野麻由美氏は、「自宅で業務を行えるため、台風発生時にも会社としてパフォーマンスを落とさずに済む」と説明する。
これまでトライアルに参加した社員からも概ね好評で、「遠方からの通勤の負担が軽くなった」「普段と違う環境で、リフレッシュできる」との声や、「自宅でテレワークをすることで平日に宅配便の荷物を受け取ることができ、物流業界の『働き方改革』にも貢献できるかも」といった意見も見られたという。
国土交通省が3月に公表した「17年度テレワーク人口実態調査結果」によると、「運輸業」のテレワーカーは雇用型で9・8%。20年の東京オリンピック・パラリンピック会期中の渋滞緩和を目的とした「2020TDM(交通需要マネジメント)推進プロジェクト」でもテレワークを推奨しており、五輪を契機に普及が進む可能性がある。
(2018年9月6日号)