厚労省/改正食衛法で倉庫、トラックの扱いは?
厚生労働省は、原則として食品を扱うすべての事業者に一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求める「食品衛生法等の一部を改正する法律」の政省令整備に着手した。改正法では食衛法営業許可業種(34業種)以外の事業者をカバーする届出制度が創設され、食品を扱う普通倉庫やトラックが届出事業者の対象となるかどうかが注目されている。
物流関係で現行の食衛法営業許可業種に含まれているのは冷蔵倉庫のみで、日本冷蔵倉庫協会(大谷邦夫会長)は昨年来、改正法への対応準備を進めている。HACCPの考え方を取り入れた衛生管理について、冷蔵倉庫の衛生管理計画作成のための手引書を完成させ、実証テストを実施した上で、10月頃までに厚労省の食品衛生管理に関する技術検討会に報告したいとする。同検討会で承認を得た後、「衛生管理計画書作成の手引き」を会員に周知する。
日冷倉の馬場研介業務部長は、「誤解してはならないのは、改正法で求めているのは『HACCPの導入』ではなく、その考えに沿った『衛生管理』であるということ。通常行っている衛生管理の記録を残し、PDCAで継続的に改善することを要求するもので、それほど難しいことではない。冷蔵倉庫の実態に合わせ、業界の大半を占める中小企業でも実行可能なレベルで手引書を作成している」と話す。
改正法の施行期日は公布日から2年(営業届出制度の創設は3年)を超えない範囲で政令により定める日とされているが、冷蔵倉庫を除くと物流関係者の反応は一部を除いて薄い。食品を扱うトラック事業者からは、「食品に限らず、トラック事業者は荷主の指示に基づき輸送を行うため、衛生管理についても権限や責任は荷主にある」との意見もあり、いまのところ対応の動きは見られない。
これまでに食品の製造・流通等に関わる14業種が厚労省の技術検討会で衛生管理計画作成の手引書の確認を受けている。食中毒が発生した際、そのサプライチェーンにかかわる事業者が「衛生管理が適切に行われていた」と証明することが企業の自己防衛につながる。業界主導で作成した手引書であれば、業界の実情に合った等身大の運用が可能になり、手引きの作成等自主的な取り組みの有効性を指摘する意見もある。
(2018年8月28日号)