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ズームアップ  活用広がる軽貨物車、バン型車両

2018.08.23

輸送の現場で軽貨物車両やバン型車両の活用が広がっている。女性や高齢者、トラックに乗務したことがない人でも運転しやすい車両であることに加え、都心や道の狭い住宅地などトラックでは搬入しにくい場所への配送にも有利。小口化する納品業務にもマッチするなど、従来のトラック輸送を補完する機能として注目を集めている。

ドライバー職の「入門車」として導入

三八五流通(本社・青森県八戸市、泉山元社長)は昨年9月から、軽ワゴン車の活用を開始した。今は東京三八五流通に2台、東北三八五流通に1台を配備し、各担当地域内で運用。細かなルート配送や緊急輸送に加え、銀座の百貨店から空港への免税品移送など、小回りの利く車でなければ対応できないような仕事を幅広く受託している。

ドライバーが集まりにくい昨今、女性や高卒者、運転に慣れていない人などに“入門車”として普通免許で乗れるワゴン車に乗ってもらい、配送業務に慣れてもらうことを目的に導入。車体には、コーポレートカラーのライトグリーンとグレーを基調に都会的なデザインを施した。東京三八五流通に加え、東北三八五流通などでも引越事業の営業車や資材輸送への活用を検討しており、車体に「三八五引越センター」の広告をペイントしてPRにつなげる――との案も出ているという。

トラックとの“適材適所”で配送を効率化

東京ユニオン物流(本社・東京都武蔵村山市、川﨑和夫社長)では、従来トラックのみで行っていた住宅設備機器の共同配送事業で、軽貨物車両による「Muscat(マスカット)便」をスタートした。同業務では卸業者の人手不足を背景に、メーカーから施工現場への直送便が増加し、物量は変わらないまま納品先件数のみが増えるなど配送効率が悪化していた。そこで、小ロットの納品をトラックからマスカット便へ移行することで配送効率を改善。同時に、マスカット便を女性でも働きやすい仕事として整備することで、ドライバー不足の解消にもつなげる。

マスカット便は車体も、女性が「乗車したい」と思えるような“マスカットカラー”で統一。子育て世代の女性も働けるよう、日中の仕事を中心に割り当てて、早朝納品はトラックが担当する。逆に、都心や住宅地などトラックでの納品に手間が掛かるルートをマスカット便に集約したことで、トラック側の仕事もスムーズになるなど、“適材適所”の運用が全体の運用効率を高めている。現在は8台が稼働し、将来的には75台まで増やす計画にある。今後は、帰り便の有効活用に向けて、マッチングサービスの利用も視野に入れる。

食品輸送では定温仕様のバン車が活躍

荷物の定温管理が求められる食品輸送においてはバン型車両を導入する会社が増えている。
キユーソー流通システム(KRS、本社・東京都調布市、西尾秀明社長)では15年に、1tバン型車両の運用を開始した。荷台部分を冷凍管理にも対応した2層式へと改造した車両で、共同物流事業における納品業務などに活用している。女性や高齢ドライバーの雇用機会創出が狙いで、大都市圏を中心に台数を増やし、現在は全国で30台が運行している。

C&Fロジホールディングス傘下の名糖運輸(本社・東京都新宿区、林原国雄社長)でも、女性が働きやすい仕組み作りの一環として、16年度から1tバン型冷蔵車両を導入している。荷台をチルド帯で温度管理できる仕様とし、グループで7台ほどが稼働。埼玉や大阪といった各地の物流センターに配備し、小売店の店舗配送業務などに従事する。2~3tの小型トラックの積載量に満たない小口の納品業務で活用し、これまでは赤帽などに任せていた業務を内製化できたことで、収益面での効果も出ているという。さらに、トラックの取り回しが難しいスペースの限られた納品先でも、小回りの利くバン型車両は優位性を発揮。購入費用もトラックより安価であり、現場からも好評であることから、さらに台数を増やしたい考えだ。
(2018年8月23日号)


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