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日販が汎用性の高い物流拠点へ機能・設備を見直し

2018.07.12

日本出版販売(日販、本社・東京都千代田区、平林彰社長)の物流改革が“守り”から“攻め”に転ずる。4月の組織改正で「物流本部」を新設し、物流拠点の再構築に着手。業量の変化に柔軟に対応できる汎用性の高い物流拠点へと機能・設備を見直し、出版物の物流効率を高めると同時に、出版物以外のアイテムの取り扱いも拡大する。また、軒数が増加する一方、1軒あたりの積載量が減っているコンビニエンスストア(CVS)向けの配送についてトラックの空きスペースの有効活用も検討していく。

DC型、TC型の拠点に再編、業界動向に柔軟に対応

2018年度から3ヵ年の中期経営計画のスタートに合わせて4月に組織を改編し、「仕入流通本部」「営業本部」「物流本部」「管理本部」の4本部体制とした。このうち「物流本部」では、従来、取引先別、アイテム別に設置していた物流拠点を、DC(Distribution Center=在庫保管型の物流センター)型、TC(Transfer Center=通過型の物流センター)型の拠点への再編を進めていく。

現在の同社の物流拠点は、出版物の市場規模が拡大していた1990年代に開設され、「大量の出版物を全国に一斉発送する」物流インフラと位置付けられている。出版市場の規模はピークの1996年の約半分に縮小している今、物流拠点もダウンサイジングが必要。また、取引先やアイテム別に拠点が分けられ、特化したマテハンを導入していることが、業量の減少や配送先・アイテムの多様化に対応する際、制約となっている。

昨年12月に、王子流通センター(書店向け書籍)にweb―Bookセンター(ネット通販)を統合したのを皮切りに、同センターおよびねりま流通センター(書店向け雑誌)、CVS営業所(CVS向け雑誌)、入谷営業所(CVS向け週刊誌)の物流拠点を機能別に再編。発送量が多いアイテム、取引先についてはTC型拠点に集約しさらに効率性を高め、雑貨など多様なアイテムに対応したDC型拠点と機能を分ける。

「出版業界の動向に柔軟に対応でき、ひとつのアイテムに依存しない物流拠点を構築し、業量が減少した時のバッファを持たせるようにする」と酒井和彦専務は物流拠点再編の意図を説明する。日販が取り扱っていないアイテムもDC型の物流拠点に取り込み、物流の“3PL化”も視野に入れる。また、全国のCVS向けの雑誌の配送網を活かし、異業種とのアライアンスも模索する。

土曜「休配日」を増加、「運賃協力金」の値上げ交渉も

4月の組織改編では、「仕入流通本部」を新設し、その下に「仕入部」「CVS部」「輸配送改革推進室」を設置。営業・物流の各部門にまたがっていた組織をひとつの本部の下にまとめることで、サプライチェーンの川上・川下との対外交渉、構造変革を早期に推し進める体制を整えた。同本部の最大のテーマのひとつとして挙げられるのが、上昇傾向にある「運賃問題」の解決だ。

具体的な活動では、使用するトラックの台数を削減するため、出版業界にも協力を要請する。発売日の日数を少なくすることで、稼働日数を減らすため、日本出版取次協会を通じて日本雑誌協会に発売日の見直しを要望。業量の少ない土曜日の「休配日」を増やす取り組みも進め、16年度は5日だったのが、17年度は13日、18年度は14日と大幅に増加した。業量の平準化に向け、発売日の集中緩和も求めていく。

大都市圏の一部で行っていた自家配送も、業量の減少が進んでいることを受け、取次他社との共同配送に順次切り替える。阪南エリアでは16年4月から書店向けを、18年2月からCVS向けを自家配送から共配に段階的に移行。大都市圏で自家配送が残る他のエリアについても検討していく。また、運賃の上昇を受け、100社を超える雑誌出版会社に対し、現在取引額の0・5%程度の「運賃協力金」の値上げ交渉も進めていく。

出版取次業界は長引く“出版不況”により配送量が減少。とくに雑誌の落ち込みが目立つ。一方でCVSの出店加速に伴い配送軒数は増加。日販によると、10年前と比べ、CVSの配送先は2万2000軒から3万3000軒に1万軒増えたのに対し、重量ベースでは約52%減っている。配送効率が悪化し、深夜配送でスケジュールもタイトなため、運送会社の撤退や値上げも見られ、輸配送の改革に迫られている。
(2018年7月12日号)


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