トラック待機時間削減へヤマトと実証実験=ライオン
社会問題となっているトラック待機時間削減でもRFIDの活用可能性が期待されている。ライオン(本社・東京都墨田区、濱逸夫社長)ではヤマトホールディングス傘下のヤマト総合研究所とともに、昨年7月3日から9月29日にかけて、RFIDを活用した納品業務と車両予約システムの活用効果を検証する実証実験を実施。RFIDを用いた入庫検品業務の生産性向上などの効果が確認された。
発注元、納品先でRFIDを活用した入出庫検品
実証実験にあたってヤマト総研が開発したスキームは、発送元・ドライバー・納品先が携帯端末で相互に入庫スケジュールの確認や連絡ができるアプリを利用することで、事前に納品時刻や納品口の予約を可能にするもの。
発注元と納品先の拠点では、RFIDを活用した入出庫検品業務を行い、出庫時にRFIDタグが添付されたパレット、商品、トラック情報と紐付けられたASNデータ(事前出庫明細データ)を作成。
このASNデータを事前に納品先に送ることで、納品先ではRFIDタグの読み取りのみで検品作業が完了。どのトラックを優先的に納品させるかといった車両の入庫スケジュールの調整も可能になり、トラックの待機時間の改善につながる。
納品業務の効率化、予約システム活用で相乗効果
実験対象はライオンの西日本保管倉庫(大阪府茨木市)~小牧流通センター(愛知県小牧市)の自社拠点間。SCM本部SCM統括部の木下陽児副主席部員は、情報伝達の完全自動化には至らなかったものの「スキームとして実証効果があった」と報告する。
大滝努副主席部員は、「RFIDを使うことで、従来は目視で行っていた入庫検品作業自体の生産性は向上した。また、トラック予約システムを活用することで、相乗効果を高められる」と指摘する。
一方で、実証実験の対象は単一の経路のみで、入庫拠点に実験対象車両が多数到着するわけではないため、「全車両に展開した際の効果はまだ把握しきれていない。また、入庫検品作業の生産性向上が、流通センター全体の効率化にどの程度寄与できるかは今後の検証課題」という。
ケース単位まで活用が有効、他のツールも選択肢
今回の実験のようにパレットにRFIDタグを添付する場合、タグのコストの問題はクリアできる見通し。「RFIDを搭載したレンタルパレットサービスを利用すれば、実用化は可能」(木下氏)という。
河野淳SCM統括部長は、「ケース単位まではRFIDの活用が有効」と話す。ただ、段ボールにRFIDタグを装着する場合、設備投資が必要で、外装の個体認識のツールとしてはQRコードなどRFID以外も選択肢として考えられるという。
なお、日用雑貨業界のRFIDの個品単位の装着は、小売価格を変えないという条件では、コストを誰が負担するにせよ、タギングの価格として確実に1円をきらないと、採算面から現実的でないと見る。
データの受け渡しで共通のインフラ構築を
今後の実験を通じて期待を寄せるのは、出庫データの電子的な事前送信により、納品口を予約したり、入庫検品を省略する運用スキームの浸透だ。個社の取り組みでは限界があり、複数メーカー、業種が参画できるプラットフォームを期待する。
納品情報とトラック情報との紐付けにより、「何の商品を、いくつ持っていくか、どのトラックか、荷姿はパレットかバラ積みかを納品先が事前に分かれば、入庫作業の生産性が上がり、バースの混雑も回避できる」との見方だ。
しかし、現時点ではメーカー~卸のセンター、卸~小売のセンター間のデータの受け渡しで共通インフラがなく、業種および流通形態ごとに異なる。これらを超えた消費財サプライチェーン全体の共通インフラが構築されることを望んでいる。
(2018年6月28日号)