農産物パレット化で協議会発足へ=農水省
農林水産省は今夏、「農産物パレット推進協議会(仮称)」を発足させる。荷役時間の短縮などトラックドライバーの負荷軽減に資する農産物の一貫パレット輸送を実現するため、トラック事業者、発着荷主である生産者、卸売事業者、小売事業者が参画する協議会を設け、統一規格のパレットを共同利用する循環利用モデルを構築する。トラック業界の「働き方改革」を後押しする農産物のパレット化を推し進め、持続可能な農産物の物流を確保する狙いもある。
統一規格のRFID付きパレットを共同利用
農水省、経済産業省、国土交通省は、農産品物流の効率化によるコスト削減等の取り組みを政府一体となって推進するため、関係業界団体も交えた「農産品物流対策関係省庁連絡会議」を開催。昨年11月に「パレット部会」を設置し、農産物の一貫パレチゼーション実現に向けた方策を検討した。
その結果、統一規格のRFID付きパレットを共同利用・管理する循環利用モデルを構築し、適切な運営体制を整備することでパレットの紛失等を防止し、持続可能な利用を可能にするとともに、全国的な取り組みへと拡大していく――とする農産物一貫パレチゼーションの方策案を策定した。
その上で農水省は、2018年度の予算で「農産物パレット推進協議会(仮称)」を7、8月頃立ち上げる。正会員として生産者団体・法人、卸売業者、仲卸業者の発荷主、賛助会員として、物流事業者、製造・外食等の着荷主を募り、産地から小売・実需者までの一貫パレチゼーションの効果を検証。関係省庁はオブザーバーとして参加する。
パレット循環利用モデルのイメージでは、パレットを発荷主(産地、卸売)がレンタル会社からレンタルし、パレットで出荷。物流事業者は荷物とともに着荷主に引渡し、着荷主(卸売、小売、実需者)が保管・返却する。回収業者が一括回収を行い、レンタルパレット会社が発荷主に再度レンタルする。
パレットは統一規格のT11型のRFID付きプラスチックレンタルパレットを利用し、産地~卸売市場~小売、実需者の物流センターで出荷、荷下ろし時にハンディターミナル等でタグを読み取り、パレットの移動情報をRFIDで把握・管理することにより紛失や滞留を防止する。
遠隔地で、統一規格のパレットの使用が可能な産地から取り組みを開始し、出荷先の市場や販売先が概ね特定される品目からモデルを実証。賛助会員の拡大に応じ、順次対象品目、産地を増やし、統一規格以外のパレット使用産地に対しても機材更新時に切り替えや参加を誘導する。最終的には全国的な取り組みに拡大させる。
手積み・手下ろし、ドライバーの確保が困難に
農産物のトラック輸送は、出荷量が直前まで決まらず、出荷待ち、荷下ろし待ち等の手待ち時間の長さや長距離輸送による長時間拘束が生じる。手積み・手下ろし等で負担が大きく、帰り荷がないことや小ロット多頻度輸送等で敬遠されがち。ドライバーの高齢化が進み、ドライバーの確保がさらに困難となる可能性がある。
有効な対策のひとつであるパレット化については、手積み、手下ろしに数時間を要する作業が1時間以内に短縮されるなど、ドライバー過重労働軽減に役立つ。しかし、パレット導入にあたっては、出荷、流通、物流の各関係者の連携・協力で、短期的には受益者とコスト負担者が異なるため、導入への合意形成が難しい。
また、農産物は輸送中の配達先の変更、着荷先の卸売市場から他市場への転送・転売、他業者による無断利用などでパレットが紛失するケースがあるため、コスト高になりがち。各事業者が異なるサイズのパレットを使い、流通段階で積み替える手間が発生したり、段ボールサイズがパレットに合っていない場合も大きい。
農水省では協議会設立とともに、18年度に新規で食品流通合理化促進事業として3億3500万円を予算化。このうち食品等物流改革高度化事業では物流業務改革促進支援事業(補助率は定額で、2分の1)として、生産者や流通業者の一貫パレチゼーションなどの取り組みを支援。3年間で荷待ち、荷下ろし時間30%削減を目指している。
(2018年6月26日号)