ズームアップ ドレージ会社に“選ばれる”荷主とは…?
海上コンテナドレージのひっ迫がなお続いている。深刻化するトラックドライバー不足に加え、コンテナターミナル(CT)の混雑により「車が回せない」状況で、「3週間先までオーダーがいっぱい」「いちげんさんお断り」――などドレージ会社の受注制限の動きに荷主にも不安が広がっている。国際物流のラストワンマイルを担うドレージ会社の輸送力が限られてくる中、“選ばれる”荷主のポイントを探ってみた。
「もぐらたたき」のように混雑が発生
“ドレージ危機”が一気に顕在化したのは年明け。東京港中央防波堤外側埋め立て地の新たなCTの混雑により連日6~7時間の長時間待機が発生し、「コンテナを搬出するのに夜中の12時を回り、翌日の乗務ができない」「他のCTの搬出入に車を回せない」といった理由から、同CTからの搬出入をドレージ会社が“拒否”する事態となった。
荷主は「運べない」状況を回避するため、同CTに寄港する船社から別の船社にブッキング先を変更。これにより、現在は別のCTが混むようになり、相変わらず長時間待機が発生している。東京港では「もぐらたたき」のようにどちらかの混雑が改善すれば、別のCTで混雑が発生し、一部では“東京港離れ”の動きもある。
輸送力は限界に達しているようにも見えるが、ドレージ会社によると「全体の台数が減っているとはいえ、長時間待機のムダをなくせばまだ需要に応えられる」という。「混雑状況が読めないので受注を控えている」会社も実際にあり、一般のトラックと同様、ムダの解消が潜在的な輸送力を引き出すカギになる。
荷主は混雑するCTの船社を選ばないで!
では、ドレージ会社に“選ばれる”、逆に“嫌われる”のはどういう荷主なのか――。ドレージ会社の最大の要望は「混雑がひどいCTに入港する船社を荷主が選ばないこと」だ。つまり、船社選定の際にCTの混雑状況を判断基準に入れてほしいというもので、「混雑するCTからの搬出入はそれなりの料金をいただかないと受注できない」という。
荷主の施設(工場・倉庫)での待機時間短縮への要望も多い。デバンニング・バンニングの間にヘッドをシャーシから切り離す「台切方式」によってヘッドの稼働率を上げられる。コンテナをシャーシに載せたままの「オンシャーシ」の台切はシャーシを余分に持つ必要があるが、「ヘッドの回転率が上がる方がありがたい」という意見だ。
台切に関して望ましいのは「荷主の施設内に台切のスペースがあること」。ドレージ会社が荷主の施設の近隣に車庫を設置するとなるとコストがかかるためだ。倉庫に到着した時点で、プラットホームにバンニングまたはデバンニングが完了したコンテナが用意され、シャーシを差替えてすぐに港に戻れる「台切・回収方式」が理想だという。
時間指定の幅が広くなると回転率が向上
一方、改善が求められるのは着時間指定。例えば輸入貨物の場合、多くの倉庫では午前中はコンテナによる入庫、午後はトラックでの出荷というように、午前・午後の時間帯に分けて運用している。仮に午後2時頃の入庫も受け付けるなど、時間指定の幅が広くなればなるほどヘッドの回転率が上がる。
デバンニング・バンニング時間の短縮も有効だ。着時間指定、短いバンニング時間という観点で好都合な貨物とされるのが「輸出用の古紙」。ドレージ会社が1日の仕事の合間の時間帯に集荷に行くことができ、ラッシングも必要としないため、バンニング時間はわずか15分でドライバーにも好評だ。
このほか「オーダーを早めにくれる荷主」もドレージ会社には評判がいい。予定が変更になると「もっと条件のよい他の仕事を断らざるを得ない」事態が発生するため、「船が遅れて納入日がずれる」「通関のキレが悪い」などドレー会社側で配車の予定が立てにくい荷主は敬遠されるというという。
「三重苦 渋滞 つけ待ち ヤード待ち」――とはあるドレージ会社の担当者の川柳。荷主の軒先、CTでの待機時間が輸送力の減退と収益の悪化の根源とされる。道路渋滞も含めてこの3つのムダを解消しさえすれば、現状の輸送力の潜在的キャパシティを広げることができる。
(2018年5月8日号)