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【ネット通販】日本郵便が国際宅配による越境EC支援を強化

2017.10.24

日本郵便(本社・東京都千代田区、横山邦男社長)は国際宅配便「ゆうグローバルエクスプレス(UGX)」を用いた越境EC事業者向けのソリューションを拡充し、国際小口荷物のさらなる取扱増をめざす。同社ではEMS(国際スピード郵便)の落ち込みが目立つ一方、UGXや小型荷物向けの「国際eパケット(ライト)」といった幅広いニーズに応える輸送サービスが好調で、国際小口輸送事業全体の売上高と取扱個数は伸長を続けている。EMSでもオンラインシッピングのモバイル対応など利便性を高めるサービスを強化することで巻き返しを図り、拡大が見込まれる越境ECニーズを取り込みたい考えだ。

UGXで幅広いニーズに応えるソリューションを展開

UGXは従来の国際郵便サービスを補完する目的で開発された国際宅配便。国際郵便においては仕向地側での配送を外国郵便事業体が担当することに対し、UGXは仏ジオポストや香港レントングループのような各国の物流事業者と提携して輸配送を行うことが違い。対象となる仕向地はアジアと欧米における51の国と地域(2017年10月時点)で、取扱量は14年の開始以降、越境EC利用の拡大を背景に倍々で増加している。
EMSや国際eパケットが定型サービスであるのに対し、UGXはサイズや重量の上限が広く様々な荷姿の商品を発送できることも特長。輸入関税も、国際郵便では受取人が支払う仕組みだが、UGXでは発送人側による納税にも対応でき、これらの機能を活かして、EC事業者の販売を支援するソリューション型のサービスを展開する方針にある。

一例として、今月からは米国のFulfillment by Amazon(FBA)への納品をUGXで安価に発送できるサービスを開始。さらに、中国向けでも越境EC税を活用した輸入スキームに対応した。今後も、日本のEC事業者が商品を海外発送する際の輸出入手続きや物流の改善ニーズに応えていく。また、現在は発送先の6割を米国が占め、次いで中国が続くが、将来的には東南アジアやロシアの越境EC市場拡大に伴う取扱量の拡大も見込む。

国際事業部の久田雅嗣担当部長は「国際郵便サービスはお客様のニーズに合うサービスを使っていただく形だが、UGXはオーダーに応じてアレンジできるため、当社として注力するエネルギーは他の国際輸送サービスに比べて必然的に高くなるだろう」と話す。

2ケタ減のEMSでもサービスアップで巻き返し図る

他方の国際郵便サービスは大別して「EMS」と「国際eパケット(ライト)」「国際小包」の3種類をラインナップする。最も取扱量の多いEMSは荷物1個から120以上の国と地域に発送できる上、追跡や損害賠償も付き、配達リードタイムも同社サービスの中で最短。06年ごろから越境ECによる利用が右肩上がりで伸び、リーマンショックで一旦は落ち込んだものの、13年以降は対前年度比2ケタ増の伸長を続けてきた。中でも中国向けは全体の4割超を占めるまでに成長している。

一方で、16年を契機に取扱量は2ケタ減に反転。要因のひとつは、外国郵便事業体側の配送費増加や航空運賃の上昇、日本郵便内のコスト増などを受けて、同年6月に、27年ぶりとなる値上げを実施したことがある。また、中国税関当局が確実な税収を目的にEMSによって輸入される物品のチェックを厳格化したことで荷物が購入者の手元に届かないケースが急増したことも、越境EC事業者のEMS離れに繋がった。

こうした中、EMSでもEC利用者を意識したサービスの強化で巻き返しを図る。たとえば、発送伝票などの必要書類を印刷できる「オンラインシッピングサービス」においてPCのみならずモバイルへの対応も予定。さらに、今年7月にフリマアプリなどによる個人間取引(CtoC‐EC)の国内宅配を対象に開始した「e発送サービス」のEMS版も実装を検討する。合わせて、クールEMSでは日本の食品を海外で販売する際のサンプル輸送などで利用が順調に増加しており、仕向地の増加と周知拡大でさらなる伸長をめざす。

好調なeパケットシリーズ、国際小包も9月はプラスに

外的要因を背景に苦戦を強いられたEMSに対して、取扱量を急増させたのが国際eパケッと国際eパケットライトだ。国際eパケットは2㎏以下の小型荷物を対象としたEMSよりも安価な輸送サービスで12年に発売。同サービスよりも配達日数に余裕を持たせることで送料をさらに抑えるとともに、ポスト投函型とした国際eパケットライトは、16年に販売を開始した。両サービスともCtoC‐ECでの旺盛な利用需要に応える形で、倍々ペースで取扱いを拡大させている。とくに投函型であるeパケットライトは日本ほど不在配達サービスが手厚くない海外向けで好評という。

航空便およびSAL便(エコノミー航空便)、船便による国際小包は15年の“爆買い”需要で、日本製品を大量購入する中国人旅行客や留学生による利用が急増したが、EMSと同じく中国税関当局による個人輸入品の検査強化で16年度以降は取扱いが減少。17年度上期も前年度比マイナスが続いていたが、為替の回復などを受けて9月度はプラスに転じる見込みにあるようだ。
(2017年10月24日号)


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