通関連/アンケート、越境EC貨物の通関に慎重なスタンス
日本通関業連合会(通関連、岡藤正策会長)が行った「越境EC貨物への対応に関する調査」で、回答者の3割が越境EC貨物について、ビジネスチャンスがあるとしながらも、リスクが高く慎重な検討が必要と考えていることがわかった。越境EC貨物の引き合いがあっても断っているケースも見られ、正確な貨物情報の事前入手やコンプライアンスの確保に課題を感じ、ビジネスの獲得に踏み切れない事情が浮き彫りになった。
越境ECの拡大に伴い、輸入許可件数はここ数年、大幅な増加傾向にあり、2022年の輸入許可件数は航空貨物では1億件を突破。海上貨物も1200万件規模となった。航空、海上貨物ともにコロナ禍前の18年比で3倍に増えており、国際物流関係者にとって新たなビジネスチャンスが広がっているとの見方もある。
一方で、各地区通関業会の会員事業者からは、貨物の事前情報が少なく、コンプライアンスの確保が難しいなどの理由から、「越境EC貨物はリスクが大きく、手を出しにくい」といった声も上がっており、引き合いがあっても断っているケースもあることから、通関連として実態を把握するためのアンケートを行った。
アンケートは24年4月16~30日にかけて、全国各地区通関業会加盟店社1538者(本社・営業所)に対して行い、回答店社数は312者(回収率20・28%)だった。回答店社の事業規模は資本金3億円以上の大企業が33%、中小企業が67%。AEO(認定事業者)の割合は61%(うちAEO通関業者は74%)だった。
現在、越境EC貨物の通関を「取り扱っている」は10%、「取り扱っていない」が88%。取り扱っている企業は「輸入のみ」が69%で最も多く、「輸出入両方」が25%、「輸出のみ」が6%だった。越境EC貨物の取り扱いでとくに大事と考えている点は「事前情報などを活用したコンプライアンス確保」(61%)が最多の回答だった。
越境EC貨物を扱っていない店社にそのビジネスに対するとらえ方を聞いたところ、「ビジネスチャンスであり積極的に検討すべき」は3%にとどまった。「ビジネスチャンスであるがリスクが高いので慎重な検討が必要」(31%)、「リスクが高いので取り扱いたくない」(18%)など慎重なスタンスがうかがえた。
越境EC貨物の通関に関する引き合いを受けたことがあるかについては、「ある」が29%、「いいえ」が64%。「ある」と回答した店社に引き合いを断った理由(複数回答)を尋ねると、「正確な貨物情報の事前入手が困難」(68)、「不正申告へのリスクが高く、通関業者としてのコンプライアンスの確保が難しいと感じた」(59)などが挙げられた。
自由意見では、「1件あたりの通関で大量かつ多品目に及ぶ場合もありコストバランスが非常に悪い」「通関業者でも当初からEC貨物を取り扱っている業者と、遅れをとった業者とではノウハウやSP貨物専用のシステム設置など大きな開きができてしまい、今から新規参入は難しくなってしまったように思う」などの意見も寄せられた。
なお、通関連ではこうしたアンケートの結果を踏まえ、通関業者が越境EC貨物を扱うにあたってコンプライアンスを確保するためにどのような注意が必要か、また、非違の事例や不正のあった事例についての情報開示を財務省関税局に要望している。
(2024年10月1日号)