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物流の持続的成長へ「209億円」要求=国交省25年度予算概算要求

2024.09.03

国土交通省は8月27日、2025年度予算概算要求を公表した。一般会計は7兆330億円(24年度予算対比1・18倍)、東日本大震災復興特別会計は617億円(1・33倍)、財政投融資は1兆5443億円(0・74倍)だった。陸海空各モードの輸送や保管、インフラ整備、人材確保など関連分野を含めた物流関係予算は総額で5300億円超となり、物流の「2024年問題」対策のため大幅に増額した24年度予算の約5000億円を超える大規模な額となる。国交省は25年度を「物流革新の2年目」と位置付けており、取り組みの〝本気度〟が伝わる要求額となった。

「効率化・商慣行・行動変容」を3本柱に

国交省全体の物流関連予算を大枠でみると、効率的な物流ネットワークの整備・活用に4336億円(1・20倍)、物流の革新や持続的成長を図る取り組みの推進に209億円(1・6倍)、国際コンテナ戦略港湾の強化に797億円(1・26倍)、物流現場の機械化・デジタル化や港湾物流情報の電子化・データ連携などをDX推進やサイバーセキュリティの確保に16億円(3・76倍)を要求した。

物流の革新と持続的成長のための予算209億円は今年2月に物流関係閣僚会議が策定した「2030年度に向けた政府の中長期計画」に基づき、①物流の効率化②商慣行の見直し③荷主・消費者の行動変容――を柱とする多様な施策を一体的に講じることで、物流の適正化と生産性向上に向けた取り組みを実施していく。

物流効率化の予算は全体で35億2500万円(3・8倍)を要求。「モーダルシフト推進」「物流GX・DXの促進」「トラック輸送の効率化」を重点項目とした。モーダルシフト推進事業は5億9900万円を要求。大型コンテナやシャーシの導入を支援するとともに物流効率化事業への補助を進める。内航海運へのシフトを促進するため、フェリー・RORO船ターミナルの機能強化や港湾の物流関連設備を整備する。貨物鉄道へのシフト促進では、貨物駅の機能強化や自然災害に弱い性質のある鉄道ネットワークを強化する。物流GXでは水素・再生エネルギーを活用するための充電設備などの導入支援を強化。物流DXでは、AIを活用した生産性向上の実証事業や自動運転トラック、ドローン物流の実用化を促進する。

効率化の土台になる標準形式によるデータ連携や標準仕様パレットの普及を図る。多様な担い手の確保・育成のための環境整備では業務効率化に有効なシステムの導入や、トラックのテールゲートリフターやトラック搭載クレーンの導入を支援。また、災害時の物流拠点の強化のため、非常用電源設備の導入を支援する。さらに、自動車安全特別会計から12億2500万円を充て、運行管理の高度化に向けたデジタル式運行記録計や遠隔点呼を可能とする機器の導入を補助する。

荷主・元請への規制実施体制を構築

商慣行の見直しには1億
4900万円(2・3倍)を要求した。長時間労働の要因となっている荷待ち・荷役作業時間の削減に向け、改正物流法に基づき荷主・元請に対する規制的措置を着実に行うよう本省・地方運輸局の体制を整備する。これと併せ、トラックの標準的運賃の普及に注力するほか、トラックGメンによる荷主・元請への調査・監視を継続できるようにする。

荷主・消費者の行動変容には1億4300万円(9・0倍)を要求。宅配の再配達率半減に向け、消費者が多様な受け取り方や余裕のある受け取りを可能とする仕組みを構築するEC事業者などを補助する。今年度10月から実施するポイント還元事業は25年度には行わないが、事業者の先進的な取り組みを補助する方針。

そのほか「2030年度に向けた政府の中長期計画」が掲げた物流改善の取り組み状況を見直し、着実なモニタリングを行うため、新たに4400万円を要求した。中長期計画の見直し時期は、26年度を初年度とする次期「総合物流施策大綱」策定の時期と合わせる。財政投融資を活用した物流施設の整備や、施設に導入する物流DX・GX関連設備の整備を図るため170億円を要求。鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じた財政投融資により、物流効率化法による認定事業を行う事業者を支援する。

鉄道不通時の迅速な代行輸送を可能に

政府の「中長期計画」は、今後10年程度で鉄道やフェリー・RORO船など内航海運の輸送量を倍増する方針を掲げた。鉄道分野では、貨物駅と鉄道ネットワークの機能強化を図り、自然災害による鉄道不通時の代替輸送を円滑に実施するための貨物駅の施設整備や、鉄道網の脆弱箇所の整備を行う。幹線鉄道等活性化事業費補助9億1000万円の内数と国費2億7300万円の内数、および鉄道施設総合安全対策事業費補助300億900万円の内数と国費100億7300万円の内数を予算要求した。また、31‌ftコンテナの導入促進や新幹線による貨物輸送拡大に向け、幹線鉄道等活性化事業費補助9億1000万円の内数と国費2億7300万円の内数、鉄道整備等基礎調査委託費等の国費4億6700万円の内数、モーダルシフト推進予算5億9900万円の内数を要求した。
(2024年9月3日号)


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