【鉄道輸送】ビール大手4社の共同輸送列車スタート
アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリービールのビール大手4社とJR貨物、日本通運は12日、札幌貨物ターミナル駅(札幌市白石区)で共同輸送列車の出発式を開催した。同駅構内にある日本通運の倉庫を活用し、北海道・道東エリア(釧路・根室地区)向けに共同輸送を開始。ビール4社は共同物流とモーダルシフトにより、ドライバー不足への対応と環境負荷低減を図り、安定的な輸送体制の構築を目指す。
なお、ビール4社とJR貨物、日通による共同輸送スキームは、8日付で改正物流総合効率化法に基づく総合効率化計画の認定を受け、今回の出発式において国土交通省北海道運輸局から認定書が授与された。
年間800台のトラックを削減
ビール4社はこれまで、同エリア向けに、札幌市近郊の製造・物流拠点(アサヒ北海道工場、キリン北海道千歳工場、サッポロ北海道工場、サントリー千歳倉庫)からトラック輸送を行っていた。今後は、トラック単位に満たない荷物を対象に、4社の製造・物流拠点から、札幌貨物ターミナル駅内の日本通運の倉庫に製品を集積し、同倉庫で配送先ごとに各社製品を仕分けして積み込み、配送を実施する。
輸送手段は鉄道コンテナ(札幌~釧路)とトラックを併用する。1社・1届け先で車両単位に満たない荷物(目安として4~5tとその倍数)は、鉄道コンテナによる共同輸送を行う。4社合算で車両単位となる場合は大型車での共同輸送を行う。トラックが満載になる届け先については、各社の拠点からのトラック輸送を一部継続するなど、荷量によって最適な輸送手段を選択し、全体最適の観点から効率性を実現していく。
この取り組みでは、札幌~釧路間330㎞、札幌~根室間450㎞の長距離を鉄道輸送にシフトすることにより、ドライバーの運転時間を年間約5300時間(従来比約35%)省力化できる見込みで、トラック運行台数にすると年間約800台の削減が可能となる。また、4社合計で、年間約330t(従来比で約28%)のCO2排出量を削減できる。
JR貨物は札幌から釧路、根室向けのコンテナスペースの有効活用が可能となり、積載率のさらなる向上が実現する
持続可能な輸送体制構築へ
出発式では、ビール4社を代表し、サッポロビールサプライチェーンマネジメント部の田島一孝部長が挨拶に立ち、「ビール4社は営業部門では切磋琢磨を繰り広げているが、物流部門では共通した課題の解決に向け、首都圏エリアでの小口配送や関西工場から北陸エリアへの共同輸配送を複数社間で実施している。4社揃っての共同物流は今回が全国初の取り組みで、大きな意味がある」と強調。その上で「ドライバー不足や配送の小ロット化に対応し、環境負荷低減への取り組みを進めているが、今回の共同輸送を優れたモデルとして、将来は他エリアでの展開も目指していきたい。企業間の垣根を越え、安定的かつ環境にやさしい物流を持続的に実現していくことが重要だ」と意欲を語った。
JR貨物の内山健・北海道支社長は「大変に画期的な取り組みで、コンテナ内に異なるお客様各社の荷物を混載する輸送は当社にとっても初めてのことだ」と強調した。内山氏は今年1月に関西~北陸エリアで開始されたアサヒ、キリン2社の共同輸送を契機として4社の共同物流への検討が進展し、日本通運がとりまとめる形で実現したと経緯を説明。「鉄道輸送の利用率が高まる一方で、空コンテナの回送など非効率性の改善が課題となっている」と述べ、「今回の共同物流は関係各社のニーズにマッチするだけでなく、鉄道輸送の未来を切り開く先進的なモデルとなる。共同物流で基幹的役割を果たすものとして、当社は安全で安定的な輸送につとめていく」と決意を述べた。
日本通運・常務執行役員北海道ブロック地域総括兼札幌支店長の青山陽一氏は「全国初のスキームに参画でき、大変光栄だ。改正物効法の認定を受けたことで、この取り組みの重要性の認識を新たにした。ビール各社はより良い製品を提供し、JR貨物と日通は安心・安全に貨物を届けるという消費者と社会への貢献を使命として忘れず、6社が協調して取り組みを進めていく」と挨拶した。
また、来賓として出席した国土交通省北海道運輸局の齊藤敬一郎・交通政策部長、高橋はるみ北海道知事の代理として平野正明知事室長、ビール酒造組合から滝本修司専務理事が祝辞を述べた。その後、関係者によるテープカットが執り行われた。
同業他社の連携が評価され改正物効法の認定
出発式では、総合効率化計画認定書授与式も行われ、北海道運輸局の齊藤部長から6社の代表者全員に認定書が手渡された。
今回の取り組みでは、同業他社が連携する共同物流のモーダルシフトとして、鉄道コンテナ輸送を優先的に活用した点と、営業分野で競争関係にある業界大手企業が、物流分野の課題解決へ向けて協同して取り組む啓発性が高く評価された。
(2017年9月19日号)