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ホンダアクセス、関東~九州間でモーダルシフト実施

2023.03.28

本田技研工業(本社・東京都港区、三部敏宏社長兼CEO)の子会社で、四輪車の純正用品の生産・輸送を手がけるホンダアクセス(本社・埼玉県新座市、酒井富志也社長)では、埼玉県日高市にある日高事業所から九州までの輸送をトラックから鉄道へモーダルシフトした。ドライバーの拘束時間やCO2排出量の削減を実現し、さらに九州内の輸送でも積極的に鉄道を活用。1月からは中国地区向けの輸送でも鉄道シフトを開始しており、物流業界の「運べなくなるリスク」への対応に力を注いでいる。

鉄道シフトに併せ、九州内の輸送ルートを見直し

ホンダアクセスは2019年に「ホワイト物流」推進運動へ参画したことを契機に、長距離輸送における鉄道シフトの取り組みを開始した。トラックドライバーの時間外労働の上限規制に伴う「2024年問題」により、物流が滞ることで発生する「運べなくなるリスク」を回避するためだ。20年には北海道向けの輸送で、羽田空港~新千歳空港間の航空輸送を、JR貨物を利用した札幌貨物ターミナル駅への鉄道輸送へシフトした。そのノウハウを活かし、日高事業所から最遠方のトラック輸送エリアとなる九州地区への輸送でも、鉄道シフトを検討。21年6月からテスト輸送を行い、同年10月から本稼働に踏み切った。

従来の九州地区への輸送では、日高事業所から福岡県内にある輸送会社の中継地まで、約1100㎞をトラックで輸送。2人乗務特例を利用することで、翌日納品を行っていた。中継地からは九州地区内8ヵ所のRDC(地域配送センター)まで、4t車5台で運び、RDCからホンダの販売店へと配送している。

今回の取り組みでは、関東~九州間のトラック輸送の大部分を鉄道輸送に置き換えるとともに、九州地区における納品ルートの見直しも行った。具体的には、日高事業所から新座貨物ターミナル駅まで荷物をトラックで輸送し、新座貨物ターミナル駅から北九州貨物ターミナル駅までを鉄道で輸送。1度の輸送で12ftコンテナ4~5本分の貨物を運ぶ。

鉄道輸送後、北九州タから北九州RDCまでをトラック輸送。北九州RDCから大分、福岡、佐賀の各RDCまでをトラックでつなぐ。さらに、北九州タから熊本駅、鹿児島貨物ターミナル駅までを鉄道で輸送し、熊本駅から熊本RDC、鹿児島タから鹿児島RDCへトラック輸送。熊本RDCから長崎、鹿児島RDCから宮崎の各RDCまでトラックで運んだ後、販売店まで配送する。

つまり、北九州RDCと熊本RDC、鹿児島RDCをその他RDCまでの中継地として活用することで、九州地区内での配送車両を4台に抑制する。

販売店との調整でリードタイムの増加に対応

鉄道シフトにあたって特に課題となったのが、リードタイムの増加だった。拠点によってはリードタイムが3~6日ほど延びると試算された。また、西日本における鉄道路線の過去1年のデータを調べたところ、遅延率は約2割に及び、実際にテスト輸送では最大24時間の遅れが生じた。このため、遅延の可能性を想定したリードタイムの設計に見直す必要があった。

これまでホンダアクセスでは受注から翌日納品を原則としており、リードタイム増加に関して販売店の理解を得る必要もあった。調達部の齋藤正人主事は「純正アクセサリーは新車に接続した状態でエンドユーザーのもとへ届くことが大半であること考慮したうえで、用品事業としての特性を最大限活用した輸送スキームを構築し、販売店に理解を求めた。また、RDCに在庫を置くことですぐに出荷でき、リードタイムが延びたとしても対応できる体制が整えられると考えた」と話す。

鉄道シフトと併せて、コンテナへの荷積みでも効率化を図った。これまで10tトラックへの荷積みは、人手によるバラ積みで行われており、2人がかりで約6時間を要していた。今回、荷崩れが発生しづらく、積載効率も高められる組み立て式のプロテクトBOXを採用。1人の作業者によるフォークリフトでの荷積みに切り替え、約30分で荷積みを終えられるようになった。

プロテクトBOXは、各地のRDCでBOX内の荷物のみをトラックへと積み替えた後に回収し、駅へと集められ鉄道の復路便で日高事業所へと返却される。調達部調達・物流課の西川健雄主任は「容器の採用や回収などでコストは上昇したが、輸送ルート見直しや復路便の割引利用などでコストの抑制に努めた」と振り返る。

さらに、豪雨などの災害により鉄道輸送が止まった際の代替輸送として、海上輸送の手段も確保することで、BCP面にも対応した。海上輸送では、東京港・横須賀港・清水港~新門司港・大分港・清水港間の輸送を想定して、代替輸送を準備。実際に本稼働を始めて間もなく、地震発生で鉄道輸送が利用できなくなり、急遽海上輸送へと切り替えた。

ドライバー拘束時間を1日3時間まで削減

これまで九州向け輸送においては、2人乗務特例を利用して対応していたものの拘束時間が長く、長時間労働の改善が喫緊の課題となっていた。取り組みの結果、日高事業所から新座タまでの運転となったことで運転時間を大幅に削減。また、荷積みの時間も3時間から30分へと削減したことで、1人あたりの1日の拘束時間は、計3時間へと大幅に減少した。日高事業所全体では、年間で5775時間、約48%の削減となった。

さらに、モーダルシフトによるCO2排出量の年間削減量は253・6tとなり、モーダルシフト前と比較して約48・2%の削減に成功した。調達部調達・物流課の谷隆二課長は「これまで当社が排出するCO2の約半分は物流部門によるものだった。持続可能な物流を構築するために、CO2の削減は徹底的に進めていく」と意欲を示す。

また、鉄道シフト前は、複数の運送事業者が関わることで下請けの多重階層が発生しており、九州地区への輸送では最大4次請けまで生じるなど、余分なコストが発生していた。鉄道シフト後は新座タまでの幹線輸送の部分を、ホンダグループで物流を手がけるホンダロジスティクスが日本通運に委託し、九州地区での配送は北部エリアをホンダパーツ西南が、南部エリアをホンダパーツ九州が担当。荷主主導で主体的に物流設計を行うことで、下請けの多重階層化を防ぐことができた。

中国地方向けも鉄道利用開始、沖縄へ海上輸送も

九州地区へのモーダルシフトの取り組みが評価され、同社は協力会社の日本通運、ホンダロジスティクス、ホンダパーツ西南、ホンダパーツ九州と共同で、令和4年度物流パートナーシップ優良事業者表彰の「経済産業大臣賞」を受賞した。

北海道・九州に続き、今年1月からは中国地方向けでも鉄道シフトを開始した。日高事業所から岡山県までのトラック輸送を鉄道に切り替えたほか、ここでもプロテクトBOXを利用した荷積みへと切り替え、年間で98・5tのCO2削減と、450時間のドライバー拘束時間削減を見込んでいる。

また、鉄道路線のない沖縄向けの輸送効率化においては、従来の航空輸送から、東京港~那覇港への海上輸送への切り替えを推進。CO2削減による環境負荷低減はもとより、輸送コストの削減にもつなげている。
(2023年3月28日号)


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