【ズームアップ】出版物流の維持へ“協業”の機運
出版物流の維持へ荷主、物流業者など関係者間の“協業”の機運が高まってきた。雑誌を中心とする出版物の輸送量の回復が見込めない状況下で、出版輸送を継続するには、従来からの商慣習や方法にとらわれない輸送形態の模索が求められている。11月24日に開催された東京都トラック協会出版物関係輸送懇談会には、出版社、取次、印刷、製本、書店、運送会社の関係者が一堂に会し、出版輸送の現状とともに、物流の非効率解消に向けた協業、共同化の必要性が共有された。
「休配日」で稼働率低下のジレンマも
懇談会では、東ト協出版・印刷・製本・取次専門部会の瀧澤賢司部会長が「出版物の輸送の現状を理解いただき、今後も維持していくにはどうしたらいいかという同じ方向を向いて進めていきたい」と挨拶。日本雑誌協会販売委員会の相賀昌宏委員長は、「(荷主側は)現状の理解から先のところが不十分。関係者に対し、至るところで発信することが突破口につながる」と物流課題の解決に意欲を示した。
部会からの現状報告では、配車権を荷主が持つことでドライバーの労働時間管理が困難になっていることや、業量減少による実車率低下、時間制運賃による収入減などが課題として挙げられた。また、運送会社の働き方改革や業量の平準化への対応として設けられた「休配日」について、ドライバーが休めるようになった一方、稼働率が下がり、収入面ではマイナスとなっているジレンマも報告された。
これに対し、日本雑誌協会の隅野叙雄物流委員長/販売委員会副委員長は、「完全休配日を増やすことで、ドライバーに休んでいただき、雇用の確保に結び付けてほしい」と強調。運送会社の収入を増やすためにも「業量を増やすことが大事」であるとし、取次、書店との間のルールの緩和も流通のチャンスを広げると指摘した。また、流通量の増加に寄与する側面からの取り組みとして「海賊版対策」に注力していることも報告した。
「集約」と「標準化」が効率化のキーワード
日本出版取次協会の田仲幹弘氏(トーハン副社長)は物流効率化のキーワードとして「集約」と「標準化」を挙げ、取次2社(トーハン、日本出版販売)による物流協業の取り組みを説明。雑誌返品業務の物流拠点統合に言及し、「雑誌の返品は日販に集約し、書籍の返品はおそらくトーハンが請け負うことになる。さらに、雑誌の送品も一緒にできないか検討している」とし、公正取引委員会から問題がない旨を確認していることを報告した。
また、日販が実施しているAIを活用した配送コースの再編について、運送会社も巻き込んだ共同研究への“進化”も提案。さらに、「コンビニ3社に出版物以外の商材を一緒に運べないか提案したが、反応が悪かった。しかし、あきらめてはいない。雑誌と(コンビニ商材を)同梱できれば運送会社にとってもプラスの収入になる」と意義を強調。運送会社が連携し、出版物以外の商材を獲得し割り振る協業可能性にも触れた。
運送会社からは雑誌の「深夜納品」の必要性について、「雑誌を買うのに子供たちが夜から並んだ時代とは変わった」として問題提起がなされ、「深夜納品がなくなれば、ドライバーの労働時間問題を解決し、車両台数も減らせるなど効率化できる」と指摘。出版社からは、全国に毎日届ける出版物輸送網の競争力を指摘し、出版物輸送網を活用して出版物以外の商材を書店で流通させ、業量を増やすアイデアが披露された。
(2022年12月6日号)