【ズームアップ】物流DX、人材不足が課題に
ソフトウェアの品質保証、テスト事業を手掛けるSHIFT(本社・東京都港区、丹下大社長)はこのほど、「物流業界におけるDXの実態調査(物流DXの推進状況と課題)」を公表した。その結果、5割超の企業でDX推進に取り組む意向が確認された一方で、既存システムの保守性やDX人材不足といった課題が明らかになった。
56%が取り組み意向、大型投資も
DXの取り組み・実施状況では、56%が「実施済み」「現在取り組んでいる」「取り組む予定がある」と回答。業界横断の調査の結果と変わらない比率で、物流業界のDX推進が遅れていないことがわかる。また、45%が「DX専門組織」または「組織横断DXプロジェクトチーム」を設置していた。
DX推進に期待する効果は、「生産性向上」(37%)および「コスト削減」(36%)が上位。48%が新しいIT施策に「5億円以上」投資しており、大型投資が多い傾向にある。他方、「1億円未満」のIT施策も多く、そうした企業では既存システムの改修や部分的な業務改革にとどまっている可能性もある。
具体的には、クラウド、IoT、AIなどンフラ基盤の変更やデータ統合を伴う最新技術の導入が進んでいた。既存システムが複雑化している状態を放置していると、さらなる問題を生む可能性や、導入自体が難しいことがあり、特に多くのアドオンやカスタマイズを伴う状況では、機能追加に時間と費用を要し、DX推進の妨げとなり得る。
レガシーシステムがボトルネックに
課題では、「IT人材が足りない」(24%)、「DX推進のノウハウを持った人材がいない、もしくは少ない」(20%)、「推進できる体制がない」(13%)の回答が57%に及んだ。次いで多かったのが、「レガシーシステムがボトルネックになっている」(14%)、「既存システムの運用に手一杯」(13%)で、27%を占める。
基幹システムの状況は「ソフトウェアのアドオン・カスタマイズにより複雑化」が33%で最多。次いで「既存システムが事業部ごとに構築されて複雑化」(サイロ化)が29%。特に基幹システムが事業部ごとにサイロ化している場合は、全体最適が難しく、新しい取り組みを進める上でも管理コストが増大する恐れがある。
物流DXの成果については、76%が「まだ成果が出ていない」と回答。「業務の効率化による生産性の向上」であっても、「成果が出ている」という回答は3割程度であり、「既存製品・サービスの高付加価値化」や「新規製品・サービスの創出」において「成果が出ている」という回答は1割程度にとどまっている。
30%のDX推進企業で「開発の人手が足りない」としており、「プロジェクトが遅延する」(27%)、「使い勝手が良くない」(24%)も上位を占める。DX推進企業では、通常の開発においても「人手が足りない」という回答が多く、UX(ユーザーエクスペリエンス)に関連した課題を感じているという回答も目立った。
(2022年7月12日号)