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【ズームアップ】トラックの55%超が“カスハラ”増加実感

2021.12.16

全日本交通運輸産業労働組合協議会は(交運労協)はこのほど、所属組合員を対象に行った「悪質クレーム(迷惑行為)アンケート調査」のレポートを公表した。いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の実態を調べたもので、コロナ禍の直近2年以内にトラックでは55%以上が「カスハラが増えている」と感じていることがわかった。コロナ関連では、トラックドライバーがアルコールスプレーをかけられ、目に入るといった迷惑行為もあったという。

一般車のあおり運転の撲滅を

調査は職場で起こっている悪質クレーム(迷惑行為)の実態について調査し、傾向を分析するのが狙い。2021年5月20日~8月31日に実施し、回答は17構成組織、2万908件だった。総回答者数のうちトラックは20・3%、海運・港湾は0・5%となっている。

直近2年以内で利用者から迷惑行為の被害の有無を聞いたところ、トラックでは26・3%が「ある」と答えた。被害経験が「11回以上」の割合が10%を超えた業種の中には海運・港湾が含まれている。直近2年以内で迷惑行為が増えていると感じた割合は、トラックでは56・5%と航空、バスに次いで高かった。

最も印象に残っている迷惑行為は全体で「暴言」(49・7%)が5割と最多。トラックでは「SNS・インターネット上での誹謗・中傷」が多い。トラックでは「制限速度を守って運転しているのに、一般の乗用車に後ろにつかれると、前が見えない分すぐにあおり運転されてしまう」とあおり運転撲滅を訴える意見もあった。

なお、全体で迷惑行為をした利用者の86・4%は男性で、40~60代が70%を占める。8割が他の利用者等もいる職場内で起きており、時間帯は20~24時が23・8%と最も多かった。対応に費やした所要時間は96・5%が1日以内だが、半年以上かかっているケースも2割程度あった。

迷惑行為体験後、「いやな思いや不快感が続いた」が全体で50%。迷惑行為への企業の大差悪については「とくに対策は実施されていない」が39・5%と4割で、「被害者へのケア」は5・6%にとどまっている。また、迷惑行為を受けた後で相談できる人が必要との意見が7割にのぼった。

医療機関への受診を自粛も

コロナ関連での差別、偏見、誹謗・中傷を受けた割合は全体で20・2%。「暴言」が40・1%と最多だった。トラックでは、「アルコールスプレーをかけられ目に入り、『やめてください、痛いです』というと逆にクレームを入れられた」事例もあった。また、医療機関の受診について「バイキンと思われないよう極力自粛」(トラック)しているとのコメントも見られた。

ハラスメントをめぐっては、19年6月の国際労働機関(ILO)総会でハラスメントに特化した初の国際労働基準となる「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃」に関する条約と勧告が採択。日本でも改正労働施策総合推進法の指針の中で、「顧客からの著しい迷惑行為に関して行うことが望ましい取り組み」が国として初めて明示されるなど、悪質クレーム対策を取り巻く状況は変化してきている。
(2021年12月16日号)


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