〝タク配〟、制度化移行で車両数は半減=国交省
新型コロナウイルスの感染症拡大への対応策として、タクシーでの飲食物のデリバリーを認める特例措置が制度化され、10月で1年を迎える。国土交通省の調査によると、特例措置が昨年9月末に終了後、事業者数は4分の1、車両数は2分の1に減少。その後、事業者数、車両数とも再び増加している。人流の緩やかな回復とともに〝本業回帰〟がみられる中、保有車両が多い一部のタクシー事業者では飲食物のデリバリー事業が定着した模様だ。
許可制度に移行後、事業者数は4分の1に
コロナ禍の移動制限に伴う旅客収入の大きな減少に苦しむタクシー業界の収入源を確保するため、国交省は昨年4月、新型コロナ対策法や道路運送法に基づく特例措置として飲食物のデリバリー業務を期限付きで許可した。特例措置は同9月末までとされたが、タクシー業界の要望を受け、10月以降、貨物自動車運送事業法に基づく許可制度に移行することで事実上〝恒久化〟を図った。
国交省の調査によると、特例措置が期限を迎えた昨年9月末時点での事業者は1754者、車両は5万4430台となっていたが、10月1日に貨物自動車運送事業法に基づく許可制度に移行した後、事業者数は約4分の1の425者に減り、車両数は半分強の2万2477台となっていた。
制度化にあたって国交省が行ったヒアリング調査によると、飲食物の注文状況は5月に緊急事態宣言が明けてから1ヵ月程度(6月中)が最盛期で、9月の時点では落ち着いていた。国交省の担当者は事業者数の減少について「緊急事態宣言の終了後、人の移動も徐々に戻ってきた中、各事業者がデリバリー事業の継続あるいは終了の判断を行ったため」と説明する。事業者数に比べ車両数の減少幅が小さいことに関し、「保有車両の多い大手を中心にデリバリー事業を軌道に乗せた事業者が一定程度いる」としている。
10月以降、事業者、車両数とも再び増加へ
ただ、昨年10月から今年6月末までの9ヵ月の推移をみると、事業者数は425者から454者と29者増加(6・8%増)。また、車両数は2万2477台から2万6172台と3695台増(16・4%増)となり、事業者数・車両数のいずれも増加。食品衛生上の問題のあった事案報告もなく、タクシーによるデリバリーサービスが概ね定着したことがうかがえる。
矢野経済研究所の調査によると食品宅配市場規模は拡大しており、23年度の市場規模は18年度比で13・0%増の2兆4172億円に達すると予測する。EC市場の拡大に伴い、感染症対策による巣篭もり需要も追い風となり、飲食物や食品の宅配需要は順調に推移している。タクシー業界も一部の事業者はこうしたニーズを取り込み、新たなビジネスモデルに挑戦しているようだ。
(2021年8月26日号)