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物流大手の21年3月期、過半数が増益に

2021.05.25

物流大手の2021年3月期業績は、過半数となる5割強の企業で営業増益となった。コロナ禍によるBtoBを中心とした物量減から、売上高が増収となった企業は3割弱にとどまったものの、業務量の減少による外注費や人件費の抑制に加え、出張費の削減といったコストコントロールが奏功した。感染拡大の収束が見えず、多くの業種・企業で厳しい経営を強いられる中、エッセンシャルワークである「物流」の底堅さが業績面からも証明されたかっこうだ。今期(22年3月期)の見通しについても、8割強の企業が増収増益を予想するなど、コロナからの反動増を見込んでいる。

コロナによる物量減で増収は27社中7社に

トラック・倉庫・フォワーダーなど陸運系を中心に、売上高1000億円以上の3月期決算企業から抽出した。それによると、21年3月期の売上高が増収となった企業は27社中7社にとどまった。増収となったのは、巣篭り需要による宅配需要が爆発的に増えたヤマトホールディングス、SGホールディングスのほか、丸和運輸機関、センコーグループホールディングスもEC需要を積極的に取り込んだ。また、近鉄エクスプレス、三井倉庫ホールディングスはスペースひっ迫による航空運賃の高騰が業績を押し上げ要因となった。
一方、BtoBの企業間物流が中心だった企業は、コロナによる物量減が影響し、収入面では苦戦を強いられた。とくに昨年4~5月を中心に上半期における減収が大きく、下期以降は増収に転じたものの、落ち込みをカバーできなかった企業が多い。

コスト効率化が奏功、27社中15社が営業増益

利益面では一転して増益となった企業が過半数を占めた。営業利益ベースで増益となったのは27社中15社で、約55%。「減収増益」となった企業は9社を数え、日本通運、丸全昭和運輸、アルプス物流は減収ながらも2ケタ増益となった。

増益となった企業の多くは、コロナによる減収を機にコストコントール機能をさらに強化し、外注費抑制や間接コスト削減に注力したことが効果を上げたほか、業務量が減ったことで従業員の総労働時間が抑制できたことも寄与した。福山通運やトナミホールディングスといった特積み事業者は、自社戦力の活用による傭車コスト削減が利益に貢献した。
コロナを契機にRPA導入をはじめとするデジタル化による間接コスト削減に乗り出した企業も多く、こうした効果は今期以降も継続することになりそうだ。

今期は実質9割以上が増収増益を予想

今期(22年3月期)の業績予想では、決算期変更や会計基準変更で前期比を公表していない企業を除き、8割強の企業が増収増益を見込むなど業績回復傾向が顕著になっている。
売上高では22社中19社が増収を、営業利益では23中19社が増益を予想している。今期は大半の企業がコロナによる物量減からの反動増を見込んでいるほか、前期に強化したコストコントール機能を継続することで、利益面での回復を見込んでいる。また、決算期を12月に変更する日本通運や、会計基準変更で前期比を公表していないSGHやセイノーホールディングスも実質的な増収増益を見込んでおり、9割以上の企業が業績の好転を織り込んでいる。
(2021年5月25日号)


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