京都貨物駅で複合物流サービス提案=京都通運
京都貨物駅で通運事業を展開する京都通運(本社・京都市下京区、髙田康裕社長)。大手量販店のアパレル・雑貨や農産品を主力に扱うとともに、複合型貨物施設を構える京都貨物駅の機能を活かした物流提案を進めている。来月には伏見区で危険物倉庫も新設予定にあり、荷主企業の幅広いニーズに応える最適な物流サービスを提供する。
12ftコンテナによる軽自動車輸送も実施
京都通運は昨年創業70周年を迎え、通運事業と貸切輸送事業、営業倉庫事業を中心に物流業を営む。保有車両台数は約120台で、このうち通運車両は梅小路支店(下京区)の25台。そのほかは10tウイング車がメインとなっている。営業所は京都と滋賀、北海道に7支店を置き、伏見支店(同伏見区)に一般品、定温、危険物倉庫を構えるとともに、東土川倉庫(同南区)でも危険物倉庫を営業する。
通運事業免許は京都貨物駅と大阪貨物ターミナル駅で保有し、近畿5県(京都・大阪・滋賀・奈良・三重)に渡る荷主企業の鉄道貨物を輸送を担う。主要貨物は全国展開する大手量販店の発着荷物や農産品、飲料など。なかでも農産品は日本有数の酒どころである京都の酒蔵で使用される酒米が東北から届くほか、北海道や九州からの青果物も取り扱っている。
京都貨物駅では12ftコンテナによる軽自動車の発送も担当している。車長の短い軽自動車が12ftコンテナに収まる特性を活かし、船や陸送車による輸送と併用。京都貨物駅に陸送車で持ち込まれた軽自動車は、専用パレットでコンテナに積み込まれている。
同駅は荷捌・保管・流通加工・積替等総合的な物流機能を持つ大規模複合施設「エフ・プラザ京都貨物」があることも特徴のひとつ。1990年に現在の発着腺荷役方式(E&S方式)コンテナホームに移設し、当時より貨物駅構内で日本酒を12ftコンテナに積み込む作業を行い全国へ発送されていた。近年では飲料メーカーに、京都貨物駅で大型トラックから12ftコンテナに積替えて鉄道で運ぶ仕事を提案したところ、京都~広島・福岡の輸送受託につながったという。
「JR貨物では全国主要駅で『レールゲート』の整備を進めているが、京都貨物駅はその前よりエフ・プラザによる物流センター機能を持ち、10t車のパレット積み降ろしにも対応するなど物流の効率化に寄与できる」と服部弘・取締役営業管理部長は指摘する。京都通運では、こうした京都貨物駅の物流機能を活かした荷主提案を、今後も進める考えだ。
旺盛な危険物保管ニーズに対応する
来期にかけては伏見支店に倉庫面積450㎡の危険物倉庫3棟を新設予定にある。消防法危険物第4類第1~4石油類を保管可能で、工業薬品などの保管需要を見込む。伏見支店では現在598㎡の危険物倉庫1棟を稼働し、東土川倉庫にも危険物倉庫4棟(計460㎡)を構えるが、荷主企業からの旺盛な需要を受けて増設を決めた。伏見支店は名神高速道路・京都南ICから車で約10分の場所に立地し、危険物の輸送にも対応。「京都市内で危険物倉庫事業を展開するのは京都通運のみ」という。
併せて、ドライバーの採用にも注力する。通運は手積み手降ろしの割合が多くドライバーが集まりにくいが、紹介報奨金制度などを有効に活用。1年間の勤続で紹介者に報奨金を支払う仕組みとしており、「実際の業務内容や勤務環境などがドライバー間で伝えられるため、採用のミスマッチが起きにくく、長く勤めてもらえることが多い」と手応えを得る。危険物輸送など有資格ドライバーの育成も進める。
ドライバー不足背景に鉄道輸送需要高まる
今期(21年3月期)の通運事業は、前期比15%ほどのマイナスで推移。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言が発令された4月から6月にかけては、大手量販店の荷物が激減した上、中国からの部品供給が滞ったことで工業製品も一時的に出荷が低迷した。その後、荷動きは回復傾向にあったが、豪雨や大雪など自然災害の影響を大きく受け、輸送量は伸び悩んでいる。
一方で、「鉄道利用のメリットは絶対に大きい」と服部氏は話す。ドライバー不足を背景に鉄道輸送ニーズはさらに高まることが予想され、とくにリードタイムに若干の余裕があるメーカー在庫のデポ間輸送などで利用が進むのではないかと分析する。
こうした中、鉄道輸送業界側のさらなる業務最適化の必要性も訴える。一例として、JR貨物による「IT FRENS&TRACEシステム」の導入について「貨物駅構内でのコンテナ位置管理が可能になり、現場作業の大幅な改善につながった」と評価。さらに、各通運会社が所有・管理している養生資材も、「JR貨物が一括で管理してレンタルする仕組みにすれば、より効率的な運用ができる」と提案する。
最近では12ft汎用コンテナの背高コンテナへの統一化で、高さ制限のある工場構内への集配が困難化している実態もある。さらに、災害時の輸送障害対策も課題となっているが、「西日本豪雨災害で見えた課題を、日本の大動脈である東海道本線などで事前に講じることができれば、リスク回避につながるのではないか」と話す。
(2021年3月30日号)