鉄道輸送推進へ異業種・同業種と協業=サントリーロジ
サントリーロジスティクス(本社・大阪市北区、武藤多賀志社長)は鉄道モーダルシフトに注力している。異業種・同業種との協業も進めており、今年2月から、ユニ・チャームと連携し、静岡~福岡間で鉄道コンテナを活用した共同輸送を開始した。今後は、長距離に留まらず、中距離における幹線輸送でも鉄道輸送の利用率を高めるとともに、輸送効率が高い31ftコンテナの利用促進を目指す。
500㎞超の行程で鉄道・海上輸送を推進
サントリーロジでは、500㎞を超える長距離輸送において、鉄道・海上へのモーダルシフトを積極的に推進している。同距離におけるモーダルシフト率は約60%で、このうちの大半は海上輸送が占めるが、鉄道輸送の割合も年々増加している。
鉄道モーダルシフトを本格的に開始したのは2007年。夏場などの繁忙期は長距離トラックの集車が困難になることから、京都ビール工場で製造する特定商品を関東・東北の出荷倉庫へ移送する行程において、物量の一部を鉄道輸送に切り替えた。その後、成長が著しいその他の飲料品などにも対象商品を拡大した。
11年3月の東日本大震災発生後は、トラックによる関東方面から東北の出荷倉庫までの製品供給がほぼストップしたため、JR貨物との新たな取り組みとして、サントリーの専用列車を仕立てて対応。比較的コンテナの余積があった週末の便も有効活用した。
13年からは、横浜羽沢駅構内に白州工場(山梨)で製造される天然水を一時ストックし、仙台や盛岡など東北方面の出荷倉庫に供給する取り組みをスタート。現在は、横浜羽沢駅のほかに、工場最寄りの長野県南松本駅と同県岡谷市の岡谷新営業所からも東北方面へ輸送している。
このほか、関東・関西から北海道・九州方面への長距離輸送は主に海上で輸送しているが、輸送の複線化の観点から、一部鉄道も利用するなど着実に輸送網を拡大してきた。
約20社と協業、同業4社とも鉄道絡め共同物流
これまで、サントリー製品を中心にモーダルシフトを進めてきたが、最近ではドライバー不足やBCP対応、CO2排出量削減対策として、他社との協業を積極的に推進しており、これまで約20社と物流面で連携している。とくに、鉄道輸送ではサントリー単体の往路または復路で物量の偏りが発生する行程において、コンテナ枠の維持や空コンテナの回送を抑制することを目的に、サントリー製品と他社貨物を組み合わせたラウンド輸送や共同輸送を実施している。
ビール4社での取り組みでは、17年から北海道の道東に向けた鉄道コンテナを活用した共同物流を開始。翌18年には関西・中国~九州間の拠点間輸送において、ビール4社の専用列車を仕立てるなど従来各社がトラック輸送していたルートを鉄道にシフトした。
19年からは専用の31ftコンテナを開発し、大阪~東京間で運用している。一般的な上方向に開閉する「ウイング型」の仕様を横方向に開閉する「観音開き型」に変更することで、貨物積み込み時の作業を簡素化。積載可能パレット数もビールパレット18枚から約1割増の20枚積みに高めた。現在はコンテナを9基保有しており、他社貨物とサントリーの酒類・飲料の輸送でも活用している。
製紙メーカーやユニ・チャームとも協業
昨年は製紙メーカーとの共同物流も開始した。同メーカーは新潟~関東間で鉄道輸送を利用しているが、関東発の物量は新潟発と比べて少なく、コンテナには余積が発生していた。一方、サントリーは関東から新潟方面への飲料輸送を主にトラックが担っていたため、製紙メーカーの余積に飲料を混載。夏場の最需要期における輸送力の確保や環境配慮に寄与している。
今年2月には静岡~福岡間の鉄道コンテナによる商品輸送をユニ・チャームと開始。重量荷物であるサントリー飲料と軽量荷物であるユニ・チャームの衛生用品をコンテナに同載し、各物流センターに輸送する。年間を通じて物流量のピークが異なる両社の組み合わせは、積載効率を向上させ、CO2排出量削減にも貢献できるという。
ドライバー不足対応、CO2排出量削減に寄与
サントリーグループでは30年までに、年間のCO2排出量を25%削減する環境ビジョンを掲げている。サントリーロジの齋藤芳弘専務は「トラックドライバーに時間外労働の罰則付き上限規制が24年度から適用されるため、ドライバー不足はさらに深刻化する。そうした背景もあった上で、グループが掲げるCO2削減目標を達成するためには、モーダルシフトは非常に重要だ」と指摘する。
これまで、500㎞を超える長距離輸送でモーダルシフトを行ってきたが、今後は中距離での鉄道・海上輸送を積極的に推進する。また、荷役作業の効率性が高い31ftコンテナの利用率を高めるため、往復間で貨物がマッチする荷主の探索に注力していく。
(2021年3月30日号)