貨物運送業務を「技能実習」の対象に=全ト協
全日本トラック協会(坂本克己会長)は11日、自由民主党の外国人労働者等特別委員会の業界ヒアリングに桝野龍二理事長が出席し、道路貨物運送業務について「技能実習2号移行対象職種」に追加するよう要望した。運転に付随する各種作業も含めた道路貨物運送業務は「専門性が高い技能」であるとしたうえで、日本の高度な技術移転と国際貢献を目的とした「技能実習制度」の趣旨とも合致することを説明。同委員会ではこれらのヒアリングをもとに政府への提言をまとめる。
多様な作業、専門性が高い技能
政府は、昨年4月の入管法改正で新たな在留資格である「特定技能」が導入されてから2年目を迎えるにあたって、制度の見直しを検討している。自民党外国人労働者等特別委員会では11日の会合で、人手不足が深刻とされるコンビニエンスストアやトラックの業界団体から現状と意見を聴取した。
全ト協の桝野理事長は、トラック運送業界の高齢化と人手不足に関し、業界の中小企業比率が9割を超えていることや、直近の4月の有効求人倍率は2・34倍と新型コロナウイルスの影響でやや低下がみられるものの、全業種の1・32倍に比べると依然として高い水準にあることを説明した。
トラックの運転業務については「単純労働であり技術移転を趣旨とする技能実習制度の趣旨にそぐわない」との見方もある。これに対し桝野氏は、「日本のトラック運送業は、車両点検、庫内業務、荷主先での検品、積卸しなど多様な作業が行われており、専門性が高い」とし、その技能を自国に帰って活かすことができる“国際貢献性”を強調した。
現行の外国人在留資格では日系人や日本人の配偶者を除きトラックドライバー職は認められていないが、「(運転以外の作業も含めた)道路貨物運送業務として、『技能実習2号移行対象職種』にできないか検討していきたい」との意向を伝え、指定手続きの簡素化や実習経費について一部公的支援制度の創設も要望した。
外国人労働者の実現へ関係機関と調整
トラックドライバーを含む自動車運転職の4月の有効求人倍率は2ヵ月連続3倍を割り込み、労働需給は若干の緩和がみられるが、中小企業を中心に今後も厳しい雇用環境が続く。鉄道貨物協会(鉄貨協)の調査では、2028年度にはトラックドライバーの不足が約28万人まで拡大すると予測されている。
全ト協では、若年ドライバーの確保や女性・高齢ドライバーの就労環境整備に引き続き注力すると同時に、人材確保対策の一環として、20年度の事業計画には、外国人労働者の実現に向け、関係機関等と調整するなど検討を進めることを盛り込んだ。
業界では賛否両論、入国規制のリスクも
昨年4月の入管法改正では、深刻な人手不足と認められた業種に新たな在留資格として「特定技能」が導入され、一定の専門性・技能を有し“即戦力”となる外国人の受け入れが可能になっているが、全ト協では幅広い分野で受け入れが増えている技能実習制度の中で、2年目以降の実習を行える「技能実習2号移行対象職種」について検討するとしている。
外国人労働者の活用については、トラック運送業界内でも賛否両論がある。新型コロナ禍では外国人の入国規制により、農業分野の作業に従事する技能実習生が入国できず、収穫作業などにも影響が出た。“エッセンシャルワーカー”であるトラック輸送の担い手として外国人の活用への過度な期待には一定のリスクも伴う。
(2020年6月23日号)