国内外で物流センター新増設=ニチレイロジG/20年度計画
ニチレイロジグループ本社(本社・東京都中央区、梅澤一彦社長)は18日、2021年3月期の事業計画を発表した。今期も国内外で新設物流センターの稼働が続く予定。また、新型コロナウイルス感染症の影響としては、外食向け冷凍食品の荷動き停滞と物量減がマイナスに響くものの、家庭向け商材は物量が増加しており、梅澤社長は「これらの物流需要を着実に取り込むとともに、一般管理費のコスト削減を徹底して、営業利益ベースでの影響を最小に留める」と説明する。
業務革新を全国へ横展開、旗艦拠点も稼働
今期重点施策では、業務革新をさらに進める。前期は庫内情報のデジタル化とデータの可視化に向けてタブレット入庫検品機能の充実やRPAの導入、無人搬送機の試験導入、トラック予約システムの横展開などに取り組んだ。今期はこれらの全国的な展開と新機能開発、実運用での活用を図る。
また、新たな3PLモデルとして、冷食メーカー物流を最重要ターゲットとした「冷食プラットフォーム構想」を具体化。複数の荷主と物流会社をつなぐコーディネーター役を同社が担うことで、物流全体の課題や有益な情報を可視化・共有化して全体最適につなげる。既に関西地区で一部業務を開始。ソリューション提供に必要なIT基盤も整備する。
国内での投資案件としては、先月、名名古屋エリアにおける冷食カテゴリーの旗艦拠点として「名古屋みなと物流センター」(名古屋市港区)を開設。冷食物流の共同化と幹線ハブ機能を活かしたワンストップサービスを提供するとともに周辺拠点のカテゴリー化を進め、最適な貨物配置で潤沢な物流需要に応える。新センターは“業務革新のモデルセンター”として省人化の先端技術を複数導入するほか構内バリアフリー化などCSRにも取り組む。
来年3月に稼働予定の「キョクレイ本牧物流センター」(横浜市中区)は、山下埠頭の再開発に伴い閉鎖する「山下物流センター」の代替センターとして、庫腹を7500t増強して開設。庫内には無人フォークリフトや自動倉庫など最新の省人化設備を導入し、業務効率を高める。同所にはグループ輸送会社のNKトランスの事業所を併設して運送機能も強化する。
関西では先月、ロジスティクス・ネットワークの2拠点をニチレイ・ロジスティクス関西へ移管。同社では、大阪港湾地区最大規模の庫腹能力と他社アセットを活かし、貨物のカテゴリー化を進めるとともに倉庫機能と運送機能を連携させて、物流の全体最適とワンストップサービスを実現する。
フランス、中国、タイで倉庫施設を拡充
海外では、フランス事業の収益回復に向けた基盤強化施策として、既存のルアーブル倉庫とリヨン倉庫を増床。庫腹不足を解消し、両地域周辺の旺盛な保管需要に応えるとともに、パリ周辺まで視野に入れた需要の取り込みを目指す。また、クロスドック拠点も整備・増強して運送ネットワークを拡充し、保管と運送の両面で取扱物量を拡大させる。
中国では今月、上海市青浦区で三温度帯倉庫の「上海第二(青浦)センター」を開設。主要顧客である大手コンビニエンスストアの出店拡大に伴うもので、周辺既存拠点との連携により店舗カバーエリアを分割し、さらなる増店計画にも対応していく。加えて、上海エリアの旺盛な保管・運送需要を獲得することで、顧客の多角化にもつなげる。
ASEANでは来年1月にタイで「SCGN2期棟」(完成イメージ)を増設予定にあり、完成後の保管能力は既存拠点のほぼ倍増の4万7460tとなる。急速凍結や解凍庫といった流通加工設備も充実させ、既存顧客のニーズの取り込みと、近年タイ国内でシェアを増している川中・川下の卸・流通小売系の新規顧客獲得を進める。
マレーシアでは昨年11月に南部ジョホールで、今年1月に北部ペナンで新センターを設置。主要都市圏の共同配送や南北拠点間輸送、各地域の調達物流といった輸配送ネットワークを構築して、他社との差別化を図る考えだ。
2期目の中計は、当初目標を据え置き
業界先駆的に進めてきたダイバーシティ経営では、今期より「女性活躍推進」を「ダイバーシティ推進」へ進化。先月には「ダイバーシティ推進室」を設置し、新人事制度も導入。多様な働き方が認められ個々が成長を実感できる環境を整備するとともに、戦略的な人材配置を行う。梅澤社長は「従業員一人一人のモチベーション向上が成長思考を促し、新たな価値創造への原動力となる」としている。
今期の業績予想は12日にニチレイが発表した売上高2095億円(前期比1・5%増)、営業利益116億円(1・9%減)の増収減益。中期経営計画(19~21年度)比では、為替影響やコロナ影響から売上高は4・0%減となるが、効率化施策の進捗とコスト削減の徹底で営業利益は1・7%増を見込む。中計最終年度の目標値は売上高2270億円、営業利益127億円を据え置く。
(2020年5月21日号)